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新月を追って

 沢山の生徒が行き
交いざわめいているはずのそこで松島のその呟きだけが耳に入り、敦志は大きく目を見開き、動揺に瞳を揺らした。
 その言葉は昨日敦志が言ったものだった。急激に後悔が押し寄せてきて松島の顔が見れないでいると慰めるように優しい声色が耳に届く

「いいんだよ?中西ちゃんはそれで」
「でもっ」

「もーっさっきからでも、ばっか」

 敦志の鼻を軽く押して松島はクスクスと楽しげに笑い、思わずギュッと目を瞑り一歩後ずさってしまった敦志に愛しげに目を細めた

「思ってもないのに好きって言われるよりよっぽどいいよ、それに俺……中西ちゃんがどう思ってるとか大して重要じゃないんだよね」

 え、と今度は違う意味で驚き、言葉をなくして松島を穴があくほど見つめ返す敦志
 松島は相変わらず、目を細め口元を笑わせ穏やかな表情を浮かべている

「俺はね、俺が中西ちゃんを好きってことだけで十分なんだ。それで好きでいさせてくれるならそれでいいっていうか……まぁ、その先期待してないわけじゃないけどね」
「…松島さんの気持ち…分かる気します。でもあんま、優しくしないで欲しいというか…」

 松島の優しい視線から逃れるように目を伏せながら敦志は戸惑うように言葉を紡いだ
 昨日のことを思うと責められても不思議じゃないのに、あくまでも優しい松島にどうしても居心地が悪くなってしまうのだ

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