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新月を追って

 何か認識する前に手が松島の手に包み込まれギュッと握られる。そして

「ありがとう」

 松島はまだ悲しげなまま精一杯の笑みを浮かべた。その見たことのない表情に敦志もいつの間にか表情を崩していた


「なんで、中西ちゃんがそんな顔するの」

 ちょっと呆れたような、でも穏やかな声色が小さく溜め息を作り、松島は敦志の握っていない方の手で敦志の頬を慰めるように撫でた

「ほら、泣かないで」
「っ…泣いてない」

 そうされると不思議と言葉とは裏腹に視界が歪み、涙がこぼれ落ちようと溜まり始めていた。
 また小さく溜め息が聞こえ、気付いた時には敦志は松島に抱きしめられた。驚き少し身動ぎするがゆるく、けれど離さないくらいの力ので抱きしめられていて敦志は諦めて力を抜いた

「…頼っていいよ」
「でも…」
「頼って」

 そう言いながら松島は敦志の後頭部に手を回し軽い力で自らの方へ抱き寄せる。
 敦志はますます松島の胸元に顔を押し付ける形になった
 まるで泣いていいと、すがりついていいと言われているようで、そう思ったら途端に力が抜けるような、それでいて、そのまま力が抜けることが許せないような感情が胸に広がり、敦志は思わず松島の制服をギュッと握った
 そして突然顔を上げて叫んだ

「でも俺はっ」
「″好きじゃない″から?」


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