新月を追って
2
休むことが許されていない敦志は気の重いまま学校へ向かった。
靴棚でのそのそと上履きに履き替えていると
「中西ちゃんっ」
声に振り向くと、待っていたのか松島が立っていた。いつもの自信がまるで感じられない不安な表情で見つめてくる。
敦志は喉が渇きくっついてしまいそうにただ見つめ返し立ち尽くしていた
二人だけが停止ボタンを押されたように立ち尽くしていて、辺りの生徒たちはまるで何事もなかったかのように教室へと急ぎ通り過ぎて行った。
それは取り残されるような焦りも感じさせた。早く教室に行かなくては、でも昨日の自分はどれだけ松島を傷つけたのだろう、けれど謝るのもなにか違う気がした。
結局敦志は松島に言うべき言葉が見つからない
「昨日…ごめんね」
先に口を開いたのは松島だった。弾かれるように顔を上げると悲しげに笑った松島の横顔が目に入った
「あんなつもり、なかった…ごめん」
悪いのは自分のはずなのに松島に謝られるのが居心地悪くて敦志は何も応えずに松島の横をすり抜けて行こうとした
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