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新月を追って

「どう、して?…やめろって言ったのに」

 少し落ち着きを取り戻した敦志は口元を手の甲で拭いながら依月を見た。
 その視線は、咎めるようなもので依月は「ごめん…」と悲しげに笑って俯いた
 腑に落ちない表情で膨れる敦志に小さく笑って依月は突然思い出したように

「あ、風呂沸かしたんだ…風呂、入って身体洗ったら?」
「え?ちょっ…ちょっとっ」

と告げ、そうだ、それがいいと自分で勝手に納得し戸惑う敦志を抱き起こして手を引いて風呂場に連れて行った



 脱衣場は大きな丸鏡に洗面台があり、未だ太陽の光が暖かく差し込んでいた。
 明るい場所で鏡の前に立つと嫌でも現実を突きつけられ、敦志は思わず目を反らし俯いた

「風呂場ん中、好きに使っていいから……バスタオルはココ、で、タオルはコレ」

 そんな敦志に気付かずに緊張から上擦った声で口早に言いながら依月が敦志に振り向く
「中西?」


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