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新月を追って

 首を解放されたと同時に床に手をつき咽ていた敦志は、一通り落ち着くと信じられないような瞳で外村を見上げた。
 すぐ側に立っていた外村の目はただただ冷たい。外村が今までしたことを思い出して敦志は勢い良く目を反らすと俯いて震えた。
 ただ脚を開いていればなんて言うがそうするように敦志を屈服させる手段を選ばない。
 ただ性欲処理するだけの相手にそこまでするんだろうか?

―――この人は俺になにを…考えたくない


      考えたくない


 唇が戦慄いて、目はこの現実を受け止めたくないように忙しなく揺れていたが視線の先の床は見えてはいない

「いい加減、立てよ」

 深い溜め息の後に外村の声が耳に入ってきた。だが脳と体の信号が引き離されたかのように聞こえているのに敦志は動けなかった

「早く立て、10数える内に立たなかったら道路で犯す…庭よりもっと見てもらえるぞ」

 嘲笑うような声に、床に手をついたまま敦志は青褪めた。どっちにしろ誰かに見られたらという不安で胸が圧迫される

「10……9………8……7……」

 カウントが開始されると耳だけ残して身体のすべての機能がシャットダウンしたような感覚に陥った。緊張で微かに荒くなった自らの吐息すら聞こえる
 立たなきゃ、分かっている。けれど立った後に待っていることは明白だ。
 自ら進んでまだあの屈辱を受け入れるのか?無理矢理押さえつけられ犯された方が未だマシだ。まだ”無理矢理”なのだから

「6……5………4……3……2……1」

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