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新月を追って
19
 放課後の保健室は誰も居なかった。ガラガラと引き戸を開けると電気の点いていない部屋は若干薄暗かった。だが締め切ったカーテンは薄く、夕暮れ時の太陽の光が透けて何かをするには不便でない程度に部屋を照らしだしていた

「あれ?先生帰ったかなぁ」

 松島は入ってくるなりそう呟くととりあえず敦志を普段、保健医が治療などで使っている黒のビニールレザーで覆われた処置用のベッドに座らせた。そしてここで待っていて、と告げて敦志の目の届かない後ろにある薬棚に行って処置の道具を探すふりをしながら包帯を手に取り、音を立てないようにしてぼんやりしている敦志の目に後ろから包帯をかけた。
突然視界を白く覆われビクリッとする敦志

「松島さん!?」

 状況が飲み込めて、それをやめさせようと手を伸ばした頃にはもう何重にも包帯を目に巻かれ、なにも映像は洩れてこなくなっていた

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