新月を追って 13 3バックのレギュラー組は笹山のせいで2バックになっていた。今は笹山がボールを持っているし外村がカヴァーにきているから良いがカウンターとか来たらどうするんだと松島は不機嫌そうにしながら笹山につられて戻っていく敦志の背中を見ていた。 走って、風になびいていた髪が立ち止まると同時に元に戻り、横を向いたせいで見える顔には汗が滲んでいた。それだけでも心臓が高鳴るのに不意にちらりと敦志が視線をこちらに向けた 恐らく敦志のことだから他意はなく、ただ後ろを振り返っただけだろう。松島を見たわけではない、だが松島は射抜かれてしまった。激しい欲望に理性を飲み込まれかける ―――ピーーーーッ ホイッスルの音に我に返ると笹山が無理にミドルシュートを打ったせいでとんでもない方向に飛んでいきボールはサブ組のものになっていた。 一転必死に戻ってくる笹山を呆れた面持ちで見つめる松島だった [*前へ][次へ#] [戻る] |