新月を追って
5
そして思わず外村の方に再び向き直った直哉に残酷に告げた。まるで傍観者のように
「奥野が見たんだ」
他の奴ともヤってんじゃねぇか?さも呆れたように次々言葉を紡いでいく外村に直哉の思考回路が追いつかない。いや、理解したくなかったのかもしれない
「そんなの、本当かどうか…わかんないだろっ」
直哉は気づいたときにはそう言って避けるように外村から顔を反らしていた。そんな直哉におや、と言った顔をした外村は
「信じねぇんだ」
酷いなと言いたげなニュアンスで呟いた
「人づてに聞いた話で決め付けていいようなことじゃないだろ…」
そう消え入りそうな声で呟いた直哉は苦々しい表情をしていた。実際見たわけでもないのだからただの噂かもしれないし、鵜呑みにして信じるのはダメだ。そう言い聞かせながらも一度湧き出た疑いは直哉の敦志を見る目を曇らせた。
やがてチャイムが鳴って教室に引き上げる直哉を外村が満足げに笑いながら見ていた
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!