新月を追って
3
「なに見てるんだ?」
そんな様子を教室のベランダから見ていた直哉に背後から外村が声をかけていた。
直哉はその呼びかけに少し驚いたような表情で振り返り
「暇で外見てたら中西来てて」
風邪治ったんだな、と本当に良かったと笑みを浮かべる直哉の隣にやってきて外村はベランダの手摺にもたれかかり外を眺める。
丁度、敦志が松島と別れて急いで校内に入っていくのが見えたところだった。
外村が何も話さないので、二人の間に漂った沈黙に気まずくて直哉が俯きかけた時、外村はポツリと呟いた
「あいつ…松島さんとヤってるんだってな」
鼻で笑う音が直哉の耳に大きく届いた。思わず、え?と今聞いた言葉が信じられないように呟いた。
確かにここは男子校で、男相手に恋愛感情を抱く者もいる。大概は片思いで終わるのだが稀に両想いになり付き合いだす者もいた。だから別に敦志と松島がそういうことをしたとして不思議はない。
仲の良い先輩と後輩が男同士で付き合っているし、偏見はなかったつもりだ。けれど明らかに直哉は嫌悪感に似た感情で胸が苦しくなり、出来ればそれが聞き間違いだと嘘だと外村に言ってほしかった
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