新月を追って
3
「あぁ、一年の…中西、サッカー部の」
外村の視線は見るではなく睨むだった。肉食動物に狙われた草食動物のような気分になって冷や汗が流れる気がした。どうにか言葉を口にしたが心臓が落ち着きを取り戻さない
「あいつ…携帯持ってんのか」
フンと鼻で笑って外村が視線を反らすと直哉は漸く張り詰めていた神経がゆるゆると弛緩していくのを感じた
「どうしたんだよ外村…」
不安げにつぶやくように直哉が尋ねると外村は、ん?と直哉を再び見た
「怖い顔して、どうした?ほんとに」
「怖い顔?…してた?俺」
悪い悪いと言いながら外村は今の一瞬が嘘のように笑ってみせた。それから外村のそんな顔や声が目に入らなかったから直哉はそんなことがあったことなど忘れてしまった
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