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新月を追って
15
 敦志の家はそこからは少し遠く、急いで走って帰ったものの帰る頃には下着までびしょ濡れになっていた。
 玄関のドアを開けて中に入るとせめて濡れないようにと胸に抱えてきた鞄を玄関框に置き、その横に腰掛け濡れてグチョグチョになった靴を脱ぎ、張り付いた靴下を脱いでいるとリビングのドアが開いて弟の敦弘が顔を出した

「おかえりーって、ずぶ濡れじゃん傘持ってかなかったの?」
「うん…」

 抗議の声をあげながら唇を尖らせる敦弘。敦志はまるで悪戯が見つかったかのようにばつの悪い顔をし

「ごめん、今着替えるから」

 そう言いながら自室のある2階への階段に一歩足を乗せたところで敦弘に手をつかまれた

「それより先に風呂入ったら?」
「でも…着替えとか持ってこなきゃいけないだろ?」
「……わかったよ、風呂沸かしとくからすぐ来いよ、すぐ!」
「わぁかったって」

 敦弘が手を離したので敦志はちょっと頬を膨らませながらそう言い背を向け、二階への階段を上がっていった

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