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新月を追って
11
「弟さん、なんて?」
「早く帰って来いって」

 敦志が申し訳なさそうな表情をしながらそう告げると直哉はいいって、と笑ってみせた。そして店内の時計を確認する

「もう帰る?」
「はい、直哉さんどうします?」
「俺も帰るかな…」

 そう呟きながら直哉の視線が敦志の手元に落ちた。どことなく帰りたくない雰囲気の直哉に同じような気持ちなんだと少しだけ嬉しくなる敦志

「それ…」
「はい?」
「携帯、アドレス教えて」

 突然のことに驚き目を見開いて直哉を見つめたまま微動だにできない敦志に、ふと気づいた直哉は視線を上げ敦志を見つめながら微笑んで見せ

「アドレス交換したら帰るから」

 それに息を吹き返したかのように敦志は「あ、はい」と慌てて携帯を手に取る

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