新月を追って
10
楽しい時間はあっという間に過ぎるもので時間という観念を忘れていた敦志に突如それを思い出させるようにポケットの携帯が振動しはじめる。
びくっとして慌てて携帯を出し、表示される名前を見て敦志は一旦、携帯をテーブルに置いた
「弟です」
「出ないんだ?」
弟が嫌い、とかではなく直哉との時間が終わるのが嫌で躊躇いがちに手を伸ばし敦志は携帯を耳に当てた
「はい?」
『兄貴?』
「うん」
『今どこ?帰ってくんの?』
弟の言葉に店内を見回し、時計を見ると時間は七時を越えていた
「今○ック、もうちょっとしたら帰るから」
『晩飯食った?』
「食ってない」
『わかった…じゃ晩飯、兄貴の分も作んね』
「うん、お願い」
『早く帰ってこいよ?』
「分かったって」
携帯を耳から離しボタンを押して通話を終了させると折りたたんでそれをテーブルに乗せた
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