新月を追って
4
「なんか…あったのか?」
直哉は喉の奥がひっつくんじゃないかってくらい口の中を乾かせて言いづらそうに尋ねた
「…なにも……なにもありません」
敦志は消え入りそうな声で言った。その表情や態度は言葉とは裏腹はなにかあったと言っているようなものだった。直哉はそのことに胸を痛めた
「そっか…でもさ、なんかあったらいつでも相談しろよ?中西の力になりたいんだ」
何故直哉がそんなことを言い出すのか、敦志は理解できないという顔で見つめかえした。
本当のこと言ったら直哉はどうするのだろう?今みたいにいつでも相談しろよ、なんてやさしい言葉…掛けてくれなくなるんじゃないだろうか、そう思うと敦志は胸が締め付けられるほど切なくなった。
敦志がなにも答えなかったのでこの小さな空間は傘を雨が打ちつける音だけになった
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