君に捧ぐ
2
一瞬、時が止まった気がした。
驚いた。
ここまで綺麗な顔をした奴がこの学校にいたのか。
顔が良い奴は必然的に学校中へ知れ渡る筈。
それに、会長として色々な意味で危険そうな生徒の名前と顔は頭に入れるようにしている。
にもかかわらずコイツの情報は頭の中に存在しない。
「ひ、ろ?」
寝ぼけているのだろうか、開いているのか開いていないのか分からない目で見上げ別の名を呼ぶ。
「違う。俺は久我 龍弥(クガ リュウヤ)だ。」
何故だかそれが無性に悔しくて、考えるより先に口が動いていた。
今はまだその気持ちに気づく事など無かったのだが。
「りゅうや…」
寝起きだからか舌っ足らずな所が余計に微笑ましい。
思わずふと笑みを浮かべると、
「久我?………会長!?」
「うぉ!?」
いきなり覚醒し飛び起きたので咄嗟に声を上げた。
というかコイツ俺の顔は知らなくても名前は知ってたのか。
誰かに聞いたのか、随分悪い情報を吹き込まれた様でそいつはイスの影に隠れ様子を伺っている。
コイツは猫か。猫なのか。
猫なんだな。
余計気に入った。
コイツを自分の傍に置きたい。
素直にそう思った。
「お前、生徒会に入らないか。」
「嫌。」
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