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空色少女
54 仲間




「お仲間ですか?」


一体何の話だろう。
疑り深く考えたが直ぐになんと無くわかった。


「家なき子って、こと?」

「クフフ…そんな感じです」


日本語上手いな。
どうやら同じみすぼらし格好しているからそう思ったらしい。
髪はくしゃくしゃ、埃の上にいたし、埃の上を滑ったし、壁が切り刻まれて埃が飛んできたし。

とにかく薄汚れた格好。


恐らく、少年は六道骸。
彼もまたみすぼらしい格好。
薄汚れた服に乾いた血がついてる。


「…似てるね」


思わず笑って洩らした。


「そうですね」


骸は微笑んだあと隣に腰をおろした。長い話をするつもりなのか抱えた林檎をコンクリートの上に置く。


「それ、撃たれたんですか?」


警戒してるのか、二人の間には距離があるが骸は頬を指差して訊いた。


「あ、うん。マフィアが撃ち合いやってて…そこから逃げてきた」

「あっちに聴こえる銃声ですね。弾倉の傷はちゃんと消毒しないと綺麗な顔が台無しになります」


骸がこちらに身体を向けてきたかと思えば頬の傷から出る血を拭ってくれる。


おかげで骸の顔がよく見えた。
白い肌に青い瞳と赤い瞳。

綺麗な顔だ。


「ありがとう…」

「いいえ。林檎、食べますか?」

「…Grazie」

「おや、イタリア語話せるんですか」

「ちょっとだけ」


差し出された林檎を服の裏で拭いて、食べようとしたが躊躇う。


「僕、そのマフィアの撃ち合いを見に行こうとしてたんです。どのマフィアか知ってますか?」

「…どうして?」


骸に目を向けず林檎を見つめて聞き返した。


「興味があったから。僕もマフィアの一員だったから」


それを聞いて思わず彼を見た。
驚いた、さらりと言うなんて。


「マフィアやめたの?」

「ええ。その追っ手だと思いまして」

「……違うと思う」

「撃ち合いしてるならそうでしょうね」


骸の横顔を見て、不意に紅奈は笑いを洩らす。


「どうしたんですか?」


すぐに骸が首を傾げた。


「ううん……ただ……」


可笑しくて紅奈は笑った。きっと言ったら骸も笑うだろう。


「“仲間がいた”と思って」

「え?」


クスクス控え目に、だけれど可笑しそうに笑う紅奈の笑みに驚いて骸は見つめる。


 


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