空色少女 264 「う゛ぉ゛おおいっ!!ベルてめぇっぶふ!!」 勢いよくドアを開き、声を轟かせたスクアーロの顔面に枕がヒットする。 「るせー。って紅奈が言ってる」 「……紅奈?」 紛れもなくベルの前にいる紅奈の仕業。 青筋を立てたが、紅奈の異変に気付きスクアーロはベッドに駆け寄った。 「風邪か?」 「症状は熱だけ。明日には治るってさ」 「飯は食ったか?」 「これからだ」 ほんのり頬が赤い紅奈。 苦しそうには見えないから、スクアーロは安心した。 スクアーロに続いて部屋に入ってきたのは紅奈の夕食を持ってきた家光だ。 「オレが食べさせる」 ベルはすぐに家光からおぼんを奪い取って紅奈を起き上がらせた。 「スクアーロ、話がある」 「……あぁ…」 家光に耳打ちされ、スクアーロは紅奈に目を向けたがすぐに家光と部屋を出た。 「今すぐベルフェゴールを連れ帰れ」 「だが…紅奈が…」 「昨日は四六時中紅奈のそばにいやがったんだぞ!もしも病人の紅奈によからぬことをしたら…!!」 しねーよ、とスクアーロは心の中で激しく否定する。 「紅奈の看病をしてるだけだろ…。せめて紅奈が治るまで泊まらせてくれ」 「ふざけるな!年頃の男どもを病気の娘と同じ部屋に置いとけるわけないだろ!」 年頃のオレを寝込んでいた紅奈の元に送らせたくせに、と思ったがスクアーロは口にしなかった。 「もう!あなたったら、コーちゃんが大事だからってそんなこと言わないの!スーくんもベルくんもお友達なんだから!」 オレはいつからスーくんと呼ばれるようになったんだ、とスクアーロは疑問に思った。 「まぁ、ベルくんかスーくんがお婿さんになるのもいいと思うわぁ」 「!!!……っオレは許さんぞっ!!!」 いや気が早すぎるだろ、とスクアーロは的外れな突っ込みを心の中でした。 お婿さん候補を否定しないスクアーロだった。 廊下で奈々と家光に挟まれていたが、二人の娘の結婚についての討論には流石に付き合えずスクアーロは紅奈の部屋に戻る。 「お前の母親…相変わらずだな」 「明日帰れよ」 紅奈が座るベッドにスクアーロも腰を掛けると紅奈が言った。 「えー…。なぁ、紅奈。オレここに住んでい?お母さんなら許してくれるっしょ」 「お母さん、呼ぶな」 「お断りだ。イタリア帰れ」 モグモグと紅奈はベルに突っ込まれた食事を噛み砕き飲み込む。 さっさと帰ってほしいようだ。 「じゃあさー、冬休みにまた来るから泊まらせて」 紅奈の冷たい反応なんてお構い無し。ベルはにっこりと頼み込んだ。 「つか来るから。遊ぼうぜ」 強制的に決めた。 紅奈は気力がないのか、何も言わない。 「ベルフェゴール!スクアーロ!奈々の飯を食え!」 紅奈の結婚についての討論を終えたのか、家光が入ってきて夕飯の時間を教えた。 奈々の大量の料理を思い出して、スクアーロとベルは顔をひきつらせる。 翌日。 紅奈は完治して綱吉と一緒に学校に向かった。 その間に、ベルとスクアーロは家光に追い出されるようにイタリアへと帰った。 「………」 二人の靴がない玄関を見て、紅奈は息を吐き捨てた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |