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空色少女
237 綱吉



コーちゃんをいじめるなぁああっ!!


そこに響く声。

ギョッとして振り返れば、部屋の入り口にはランドセルを背負った紅奈の弟。


キッといっちょ前にオレを睨み付ける。


「…綱吉…」


起き上がる紅奈。
身体を支える腕が震えていたから、オレが支えた。


「お兄ちゃんだよ…スクアーロお兄ちゃん」

「え…?あっ!」


……コイツ。一年足らずでオレを忘れやがったな。


「…いじめられてないよ。おかえりなさい、綱吉」


紅奈は俯きながら、涙を拭き取った。

弟にはいつも優しすぎる笑みを向けていたのに……暗い顔のまま。


オレ達が、ここまで紅奈を追い込んだのか。


「ただいまっ!」


弟は相変わらず鈍感なのか、紅奈に笑顔で返す。


「あのねっ!あのねっ!作文書いたんだ!」


うざいほど明るい。
背負っていたランドセルをおろして中を探る。
忽ち小学生の教科書が散乱する。
ようやく弟は作文とやらを見付け出したらしい。


「コーちゃん、読むから聞いてくれる?」

「……うん」

「いや…おい…」


空気読め。つうか紅奈の顔を見やがれ。
オレはなんとか話を戻そうと阻止する。


「紅奈とまだ話があるんだ」

「でもっぼくのしょうらいの夢についてで…コーちゃんに聞いてほしいんだっ」


なんで今お前なんかの将来の夢を聞かなきゃなんねぇんだっ。

珍しく食い下がる。


「…いいよ、聞くよ」


紅奈は静かに答える。

…仕方ねぇか。


綱吉は笑顔を輝かせた。

全く見分けられなかった双子。
髪型が違うせいか、外見まで全く違うように見えてきた。


「だいめい、"ぼくのお姉ちゃん"」


…将来の夢についての作文じゃなかったのか?

どこまでコイツはアホなんだ。






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