空色少女
235
紅奈が目覚めるまで、オレは傍らで待つことにした。
暫くすると紅奈がうっすらと目を開く。
「…紅奈…」
ぼんやりと見上げる紅奈の名前を呼べば、やっとオレを認識したのか手を伸ばした。
「……スク…」
あまりにもか細い声で聞き取りずらかったが、確かにオレの名を呼んだ。
紅奈が伸ばした手が、オレの膝の上に落ちた。
「スク……なんで…おまえ…ここに」
膝の上に落ちたその手を拾う。
気のせいなんかじゃなかった。
稽古中に何度も振り上げられた手が、窶れている。ただでさえ小さな手が、更に小さく見えた。
重ねて比べた時より…うんと小さい。
「……事故に…遭ったのか…」
「…うん……」
「……学校…休んでんのか…」
「…うん…」
「……体調…悪いのか…」
「……うん」
「……どうやって…知ったんだ…?」
紅奈は起き上がらないまま、弱々しい声で頷く。オレはまともに目を合わせることが出来ず俯く。
少し沈黙のまが流れた。
「…夢を見たんだ……。アイツが9代目と………リアルで…気持ち悪くて……起きてすぐにお前達と……連絡を取ろうとしたけど…出なくて………ただの夢だと思いたくて…」
途切れ途切れに紅奈は、答える。
「あたしの…せいだ」
ハッとしてオレは紅奈の顔を見た。
「ここにいたんだ。ここに……会いに来たんだよ…アイツ……。その直後だ…クーデターは…。…アイツは…あたしに会いに来てまで話さなきゃいけないことがあったはずなのに……あたしは熱なんかで寝込んで…聞いてやれなかった…!」
オレの手に爪を立てて握り締める。
だが衰弱した紅奈の握力では、オレの手に白い痕しか残さない。
ここに、XANXUSはいった。
紅奈に会いに行ったのか。
「アイツは…あたしに話に来たのに………あたしが聞いてやれなかったから……アイツは追い込まれてて……アイツはただ…っただ………9代目の息子でありたかっただけなのにっ…」
「!………お前…知ってたのか…」
紅奈の瞳から涙が落ちた。
こんな。
こんな。
こんな紅奈は、初めてだ。
知っていたのか。
XANXUSが9代目の実の息子じゃないという事実。
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