空色少女 232 紅奈が全てを知っているかどうか。 家光はスクアーロに問い詰めた。 知ったのならば、彼らの口から知ったに違いない。 そう考えたからだ。 「紅奈は………クーデターのことを知ってるのか…!?」 驚愕したその顔をみて、家光は問い詰めるのをやめた。 スクアーロ達は、クーデターのことを話していない。それは当然だろう。 ならばマフィアやボンゴレのことだって、明かしていないだろう。 そう至った。 「待て!家光!紅奈はっ…アイツはどこまで知ってんだ!?」 「オレが知りたいっ!!」 掴みかかったスクアーロを振り払う。 家光自身が知りたいことだ。 スクアーロは歯を食い縛り、俯いた。 スクアーロにさえも、知るすべはない。 反乱者達は、厳重に軟禁されている状態。 それにスクアーロは。 紅奈に会わせる顔すらなかった。 綱吉は出来ること全てを手伝った。 ずっとベッドの上にいる紅奈に出来ること全てを。 手を引いてトイレに連れてってやったり、お風呂に入り髪や背中を洗ってあげたり、ご飯を食べさせてあげたりした。 「いらない」「ううん」「もういい」 紅奈からそんな言葉しか返ってこなかったが、綱吉はそれでも話し掛けた。 綱吉の知る姉に戻ってもらうために。 紅奈が熱を出して寝込んだ時は、シャマルにバトンタッチ。 辛そうに熱に魘されている紅奈を、シャマルは一人で看病をした。 (この歳でこんなになる悩みって…なんなんだ…) 進んで紅奈の看病をすると言ったものの、こうも長引くとは思いもしなかった。 正直しんどい。 だが目の前のこの少女を見捨てられない。 飛行機の中で気丈に叱りつけて威風堂々と大人達に指示していたあの少女は何処に行ってしまったんだ。 あの彼女をここまでにしたのはなんなんだ? 「…───……」 「!……?」 紅奈が何かを呟く。 魘されている時に、まともな言葉を口にしたのは初めてだ。 シャマルは聞き取ろうと顔を近付ける。 「…─…──…」 小さな唇がか細い声を出す。 小さすぎて、聞き取れない。 (なんて言ってるんだ…?) また顔を近付けた。 ぱち。 紅奈が目を開いていたことに気付き、シャマルは大きく仰け反る。 流石にあの沢田家光の娘に痴漢扱いされてはたまらない。 顔を近付けていたことを弁明しようとした。 「……───…─…」 すっ、と紅奈は手を伸ばす。 シャマルをぼんやりした瞳で見つめて、手を伸ばしてきた。 震えた右手が、ゆっくりと。 聞き取れない囁く声は、まるで誰かを呼んでいるようだった。 スト。 紅奈の力なく、シャマルの膝の上に落ちた。 「…………」 また閉じられた瞼から雫が流れる。 手を伸ばしてシャマルは指で拭った。 「女の涙には弱ぇーんだよ……」 [*前へ][次へ#] [戻る] |