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空色少女
181









「ジュリエットの家だぁ?」


その夜は用意された部屋で眠った。

起きてからスクアーロを呼び出して迎えに来てもらい、行き先を言えば怪訝な顔をするスクアーロ。


「そ。ヴェローナに行って、ジュリエットの家に行ってから帰るの」

「口実じゃなくて…マジで行くのか?」

「マジ」


紅奈は頷いて綱吉の手を引いて後部座席に乗り込む。
スクアーロは納得いかない様子だ。


「お嬢ちゃん」


XANXUSが助手席に座ると、いつもの若い守護者の男が窓を叩いた。

紅奈は窓を開ける。


「誰ですか、知らない人とは喋っちゃダメです」

「だから会うの四度目……」


素っ気ない紅奈の態度に顔をひきつらせたがめげずに男は手にした本を差し出した。


「これ、坊っちゃんのお父様から」

「おじいちゃんから…?あ、ロミオとジュリエットだ」

「お、お嬢ちゃんすごいねぇ。イタリア語が読めるのか。それはイタリア語版のロミオとジュリエットの本で、坊っちゃんのお父様が貸してあげるってさ。これ読んで誰かを愛するんだぜ」


9代目からか。
紅奈が受け取れば笑みを向けて男が手を伸ばす。

頭を撫でようとしたが、それはスクアーロが叩いて阻止。

さわんじゃねぇ。
と睨む。


「ははは、まるで守護者だな。じゃ、またね」


警戒して睨み付けるスクアーロとXANXUSを笑ってから、くるりと背を向け去る。

失礼な男だ。


「…守護者だってさ」


紅奈は窓を閉めてから笑う。

口を尖らせスクアーロは車を発車させる。


「しゅごしゃってなに?」

「守る人のことだよ」

「まもる?」

「そう。守り抜く強くかっこいい人なんだよ」

「へぇー、じゃあお兄さんはかっこいいんだね!」


質問する綱吉にわかりやすい回答をする紅奈。

単純な頭をしたガキだ。
スクアーロはミラーで呆れた目を向ける。


紅奈は早速本を開いてみていた。


「…なんでまたジュリエットの家なんかに行くんだ?」

「スクアーロお兄ちゃん、ロミオとジュリエット知ってるんだね。ちょー意外」

バカにしてんのか……?


うっすら青筋を立てるスクアーロ。


本当に興味がなさそうだから、知ってることが意外だ。
案外知識はあるんだよなぁ…。

紅奈はあえて言わずに本に目を落とす。


「ジュリエットの家も知ってるだ?」

「まぁ…有名な観光スポットだしなぁ…」

「恋人と行ったわけじゃないんだ」

「なっ!?い、行くかよ!!」

「動揺してんじゃねぇ、カス」


XANXUSの言う通り少し動揺したスクアーロだが、紅奈はちっとも気に止めない。






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