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空色少女
140 着せ替え姫



ピッツァを堪能しながら腹を満たす。


「で、何に使うの?その金」

「紅奈が欲しいもの」

「……別にないけど…」

「服は?アクセサリーは?」

「いらない」

「………………」


特に欲しいものがない紅奈。ベルは沈黙する。

服などどうでもいい。
綱吉と同じならば尚更なんでもいい。

アクセサリーをつける年頃でもないから、欲しがらないのだ。


クルリとベルは標的を変える。
びくりと綱吉は震え上がった。


「綱吉。オモチャ、欲しいだろ?」


悪魔が囁く。


「…コウちゃ…ん…」


綱吉は姉を見上げた。


「ベルお兄ちゃんがオモチャ買ってくれるって」


にこり、紅奈は微笑んだ。

果たしてこれも悪魔の囁きなのか否か。


「いっ、いいっ!いらないよっ」


ブンブンと綱吉は首を横に振った。


「そう?」

「……ちっ」


ベルは舌打ちする。


「じゃあオレの買い物に付き合ってよ」

「いいけど」

「うしし!」







「……ベル。貴方の買い物じゃないの?」

「オレの買い物だけど」

「じゃあなんであたしに合わせた服を買っていってるの?」


暇潰しでベルの買い物に付き合ったが、ベルが購入したのは紅奈に合わせた服ばかり。

紅奈の身体に合わせて似合うなら即購入。似合わないならぽい。
その繰り返しをしているベル。


「うしし、紅奈にプレゼント」

「いらないから。余計な荷物を増やさないでよ」


ありがた迷惑というやつだ。
だがベルはやめようとしない。


「綱吉、お前も紅奈に合う服選べよ」

「えっ」


綱吉も巻き込む。


「要らないっての。ベル。邪魔だって」

「いいじゃん。一回だけ着ろよ」

「着ない。」

「着ろって」

「着ない。」

「着ろって」

「着ない。」

「着ろって!」


ぐいぐいと押し付けるベル。
紅奈は押し返す。


「コウちゃん!これきて!」


そこに服を選んできた綱吉が戻ってきて、キラキラした目でそれを紅奈に差し出した。


「……一回だけだよ」


紅奈は仕方なくそれに着替えることにした。

綱吉のはすんなり受け取ったのが、ムカついてベルは綱吉を蹴る。
紅奈がハンガーを投げてきてそれがベルに直撃した。


「ほら、着たよ。ツナくん」

「わぁ!コウちゃん、可愛い!」


試着室のドアを開けて出てきた紅奈は橙色のノースリーブのワンピースを着ていた。

綱吉が選んだワンピース。

たまたまなのか、かなりの値段だった。
この店はブランド品なのだから高いのは当然だが、やけに値段が高い。
上質な布だろうか?


「こちらをお付けしたらもっと可愛らしくなりますよ」

「口出すなよ厚化粧ババ」


ベルトを勧めようとした店員をベルは一蹴する。

素直な子供からの強烈な一言に大ダメージを受ける女店員だった。


「これこれ。あとは靴とアクセ」


紅奈に白のブラウスを着させる。それから支払って次の店に向かう。


「要らないってば」

「オレと綱吉が選んだ服ぐらい使えよ」


綱吉の名前を出せば紅奈は拒否らない。綱吉が弱点。


「これから成長して着れなくなるんだから、どうでもいいんだけど」

「じゃあオレは毎年買ってやるよ」

「……」


手を引っ張るベルは振り返ってニッと笑みを向けた。


「キングの服はオレが決める」


握った紅奈の右手の甲に、ベルは口付けを落とす。


「……着せ替え人形にならない」

「着せ替え姫」


うしし、とベルはまた歩き出した。

次は靴屋。
ずらりと並ぶ靴の中から、ベルは選んで紅奈に履かせる。
だが気に入らず、なかなかベルは頷かなかった。






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