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「んまぁ!恵ちゃんとティアナが作ったの?」

「ティアナさんの手伝いしたんだ」

「美味しいですー」


XANXUSさんにも言ってしまったから有言実行で二人とシェフで夕飯を作った。


片付けを済ませた幹部諸君とボスが席について食事開始。

本当にティアナナさんの手伝いしかしてない。

あたしは料理上手い方じゃないから、ティアナさんに任せて正解でした。


「あれー?恵さんの隣は?」


フラン君が気付いて訊く。

あたしの左隣は空席だけど、リゾットとステーキが置かれてる。


「スクアーロの分だよ。帰って来るかはわからないけど一応ね」


トマトのリゾットをスプーンで掬って口に入れた。

本当はスクアーロの作ったやつを食べたかったんだけどね。


もう食べられそうにもない。


「あ、ベル君。左手大丈夫?」

「じゃあ食べさせて」

「右手は無事でしょ…」


ベル君の左手首は湿布が貼られてた。軽症みたいでよかった…。


「ベル先輩が恵さんを庇うなんて意外ですー。見殺しにしそうなのに」

「もしくは邪魔だって殺しちゃうものね」

「ちょ、食事中!食事中!」


殺ってワードに食事中にだけは思い出したくない光景がフラッシュバックした。


「ティアナさーん、調べはついたのですかー?」

「いえ、まだ。信用できる者に調べているところよ。襲撃者の身元もまだ判明していないわ」

「元凶を早く根絶やせ」

「急いで調べるわ」

「ティアナならすぐ調べてくれるわね!その時はちゃんと私達が殺っておくわ!」


さらりとあたしの意見はスルーされる。


仕方ない。

彼らからしたら食事中でも殺る殺らないの話をするのは日常茶飯事。

賑やかに話しているのを黙って聞いておく。


こうゆうのを茅の外と言うのだろう。


あたしだけ違う枠の中にいる。

距離感を感じる。


遠くに感じる。


誰とも繋がっていないように感じる。


ぴったりの言葉は、そう。


やっぱり、希薄。


ここがスクアーロの居場所。

それはわかってる。

スクアーロのいるべき場所。

そう理解してる。


でも。

あたしには不似合いな場所。


しっくりこない場所。

しっくりこない場所?そんなのどこだってそうだ。


誰といたって、関係が希薄に感じる。繋がりが希薄に思える。


自分の世界でも居場所を見付けられず、この世界でも居場所を見付けられない。


そもそもいつ消えるかわからないこの世界は─────────希薄だ。


自嘲の笑みを溢してから、あたしは口火を切る。


「あの、皆さん」


会話に割って入って注目を集めた。


「短い間でしたが、ありがとうございました」


あたしは静かに微笑んでみせた。









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