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「恵さん!何故ここに…」

「ティアナさん!大丈夫!?」

「わたしは無事」


黒焦げの廊下を駆けてるティアナさんがあたしの手を掴み立たせて怪我がないかを確認する。

ティアナさんに怪我はない。
良かったぁ…。


「大体片付けたわよん」

「皆さん無事ですー?」

「ルッスさん!フラン君!」

「恵さん、涙目」

「一般人に襲撃はキツいんよ」


フラン君が駆け寄ってくれたから血に濡れた右手じゃない左手で手を握り締める。


「スクアーロは…?」

「いないんですかー?」

「んもう、恋人の危機にいないなんて」


ルッスーリアの言葉に弱々しく苦笑を洩らす。

スクアーロはまだ帰ってきてない。


「おい、ティアナ」

「幹部のほとんどが留守なのを狙ったから、内部に情報を流した者がいるはず。調べるわ」

「元凶まで排除しろ」

「わかってる。…フラン、恵さんのそばにいてあげて」


XANXUSさんとティアナさんが話しているのを見ていれば、ティアナさんと目が合う。

ティアナさんの気遣いに慌てて立ち上がる。


「ううん!あたしは大丈夫!」

「…だけど」

「大丈夫よ!皆は後片付けとかあるでしょ?」

「…震えてるわ」

「すぐおさまる!あたし、夕飯シェフと作るからっ」

「てめえが作るのか」

「はい、不味くしないよう頑張ります!」

「美味しくするように頑張るんじゃなく?」

「では皆さん、後片付け頑張ってね!」


震える手を背中に隠して元気だと笑って見せてから、ティアナさんの心配な眼差しを避けるようにキッチンに向かった。


死体処理とかあたしに無理だしね。

うん。一人で部屋にいるより、何かしてた方がまし。

震えが止まらないを洗ってから、食材を出す。


「……あたし、まじで、場違い…」


息を深く吐いて俯く。


「…スクアーロ……」


呟いて呼んでも返事はなく、虚しいだけだった。


笑ってしまう。


希薄に笑った。


暫く立ち尽くしたままでいれば、ティアナさんが入ってきた。


そっとティアナさんの右手があたしの左手に置かれる。

黙ってティアナさんはあたしを見つめた。


もう明るく笑う元気もなくて、泣きそうになるのを堪えるしか出来なかった。


昨日は泣きまくったのにな…。


ティアナさんは何も言わず、あたしの肩に腕を回して抱き締める。


その優しさに泣きそうになったが、堪えきった。


「…疲れちゃった…」


ティアナさんの肩に顔を埋めて、弱々しく吐く。


ティアナさんは何も言わなかった。


その方が嬉しかった。















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