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色白の手をあたしに伸ばして、顔に触れる。


「…泣いたの?目が赤いわ」


あたしは直ぐに顔を逸らした。


「つい、泣いちゃって…」


まだ自分の顔を見ていなかったから洗面所の鏡で確認する。ちょっと目元が腫れていた。

数日溜め込んでたのを吐くように号泣したわりには、まともな顔だ。


「あたしも入るから、早く」

「……いえ、恵さんからどうぞ」

「じゃあお言葉に甘えて!あ、下着はここ。で、服はサイズが合わないかもだけど…」


パタパタとタンスの元に行き、引き出しを開く。


「……下着、少ないわね」

「え?…ああ、スクアーロに買わせるの…恥ずかしくてさっと…さっとね」


思った以上に異性と下着を買うのは恥ずかしかった。
その異性が同じ部屋で生活するスクアーロなら尚更。


「なら、買いに行きましょう。わたしも新しい下着を買うつもりだったから、服を貸してくれたお返しに」

「ほんと?助かる!ありがと!」


スクアーロに下着まで把握されていることが嫌で嫌で仕方なかったからお言葉に甘えた。


「ボンゴレ本部にも行くのでしょう?」

「え」

「スクアーロがすっぽかしたから、行くのでしょう?わたしもヴァリアーの報告書を提出しないと」

「あ、うん…」


そう言えばティアナさんが潰れる前に頼み込んだっけ。
連れてって。

というか、仕事の邪魔をしたことを謝らなきゃ。


「オレも行く」


そこに聴こえてきた男の声。

ティアナさんが顔を向けた先に、あたしも見てみた。


扉に寄りかかって笑みを向けてくるのはベル。


「え?」

「うしし、王子が付き合ってやるよ」


唐突に現れて妙なことを言い出すベルに、あたしとティアナさんは顔をあわせた。

邪険にせずベルも一緒に出掛けることにする。

ベルも暇みたいだしね。







「恵、こっち」

「え?あ」


ただただついてくるだけらしく、移動手段の車はティアナさんが運転。

助手席に座ろうとしたがその前にベルに押されて後部座席に押し込まれた。


そのままベルも後部座席に乗り込んだ。


「…」


ティアナさんは怪訝に振り返ってベルを見たけど、車を走らせた。


「スクアーロはー?」

「仕事。えっと下調べとか言ってたな」

「あーあの任務か。昨夜はヨロシクやったわけ?」

「え?えーと…」


頭の後ろで腕を組んでニヤニヤと訊いてくるベル。

質問の真意がわからず目が游ぐ。

ヨロシクって。なんだ。


「へー」


答えていないのに納得したように頷くベルに少し焦る。変な捉え方をしてないといいな…。





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