077 スクアーロ視点
カッカラン。
投げ付けられたグラスが割れずに転がる。
帰ってきてみれば会いたくて仕方なかった恵は部屋にいず、談話室に来てみりゃ男どもに囲まれて酒を飲んでいた。
恵はまたすっぽかしたのを相当怒っているらしくオレが近付くのを拒否しやがる。飛んでくるグラスを避けて恵を掴まえたら、薬品のような臭いがした。
テーブルの上にはジンのボトル。
「あ゛!?誰だ、ジンを飲ませやがったのは!」
「むぎゅー」
恵の頬を掴んで、問い詰めたが誰も答えない。
コイツ、いつもジュース並のアルコールしか飲まねーんだぞ!?
すんげぇアルコール回ってんじゃねーか!
「はまへかふ」
「うししー!」
「言っておくけど、恵ちゃんから自分で飲んだんだからね」
「まぁミー達が煽…ゲロ!」
もがく恵。
ふと、恵の後ろに見えるXANXUSに目が留まる。
黙って立ち尽くして何やってんのかと見てみれば、ティアナの片腕を掴んでいた。
ティアナも酔ってんのか、眠そうな顔を赤くして頭を垂らしている。
ギロリ。
XANXUSがオレを睨んできた。
「カス。責任持ってティアナを本部に送ってこい」
「はぁ!?なんでオレがっふがっ!」
今度はXANXUSがグラスを投げてきた。恵を庇ったら頭に当たる。
「てめえの女が潰したんだ、責任持って送ってこい!」
「あたひも、本部に行く!」
「あぁ!?」
オレに酔っ払い二人を送れというのか!?
「う゛お゛ぉいっ!なんで恵が本部に行くんだ!?」
「すっぽんかひたらいふっていったたた」
「言えてねぇぞう゛お゛ぉいっ!!」
そう言えばすっぽかしたら本部に行くって言ってたな…。
「行かせねぇぞ!」
「いきゅもん!」
くそ!可愛いな!う゛お゛いっ!
「じゃーあたしが送るもん」
「酔っ払いが運転…ってお前免許持ってねぇだろーが!!」
くるりとXANXUSに言う恵を引っ張って引き寄せる。
と殴られた。
いつも手加減をして殴ったり蹴ったりしてくる恵は、酔っ払ってるせいで制御なしで殴りやがった。
…いつもよりは痛ぇ。
オレから離れた恵はよろめいて、あろうことか。
「みゃ」
「お。」
ベルの膝の上に座り込んだ。
「う゛お゛ぉいっ!!希薄姫がぁ!」
怒鳴り付けて恵を引っ張ってベルと引き離した。
恵は嫌がって掴んだ手を振り回す。
ただでさえ小悪魔な仕草をするくせに、他の男どもの前で酔っ払いやがって!
「いきゅもん!いきゅもん!」
「行かせねぇぞ!」
「約束破ったのはそっちやん!」
「それは謝る!訳があるんだ!」
「知らんわ!もっさんのお世話になるもん!!」
「もっさんって誰だぁあ!?」
前みたいに強く握り締めれば腕を振り回すのをやめた。
「うーっ!」
アルコールで真っ赤になった顔の恵は涙目でオレを睨みあげる。
「朝から待ってたのに…」
「?」
「ずっと待ってたのに!」
泣きそうになって言う恵に、罪悪感が募った。
この荒れようからして、健気に待っていたんだろう。
オレが帰ってくるのを、信じて待ってたんだろう。
「恵…わる」
「大嫌いっ!!」
「!?」
紅のその言葉が談話室にいやに轟いた。
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