073
一周目はただ一人を抜いてさらりとスクアーロについての愚痴を吐いた。
詰まったのはティアナさん。
「なんで！？あのアホ毛になんの不満もないの！？」
「あの声に苛つかねーの？」
「ティアナさん、心広いですねー」
「…特にないわ。仕事もヴァリアーの中じゃあ一番こなすし…」
「ありえなっ！でも、はい！ジンストレート一号目！」
人間相手に不満や悪口が一つもでないなんて、フラン君のいう通り心が広いんだろう。
それでも決めたことだから、ジンを入れたグラスを差し出す。
「あの、わたくしはまだ職務中で…」
「マフィアはそんなお堅いもんじゃないでしょ！」
「さっさと飲めよ」
「飲まなきゃだめよん」
「わたくし、お酒は…」
「飲むか、好きな人を吐くか！どっち！？」
三人で急かしてもティアナさんが躊躇するから、言えばギョッとしたティアナさんは直ぐ様グラスの中のジンを飲み干した。
「ゲホゲホ」とティアナさんが噎せるからフラン君が水を差し出す。
好きな人を吐くでもありだったんだけどね。
「はい二週目いくぞ！」
「恵さんのテンションがハイですねー」
「まだまだ上がるぜいえい！」
「しししー、もう酔ってるぜコイツ」
「出来上がっちゃってるわねー」
酔っぱらわなくちゃやってらんない。
二週目もまたティアナさんはジンを飲んだ。
あたしは皆の愚痴を聞きながら、ジュースで割ったリキュールを飲む。
「あのー、恵さん」
「んにゃあ？」
「ティアナさんがヤバそうです」
「え、潰れた？ゲキ弱じゃん」
「見掛けによらないわねぇ」
フラン君に言われて気付いた。
あたしと同じソファに座ったティアナさんがソファの肘掛けに項垂れている。
仕事が出来るクールな女のイメージが強いから、酒に弱いなんて意外だ。
「ティアナさーん、大丈夫ー？」
「むにゃ…」
「ティアナさんがむにゃとか可愛い！ギャップ萌え！」
「ひたすらティアナさんが可哀想です…」
起こしてみればポケーとした顔のティアナナさん。
お人形さんフェイスのティアナさんからの「むにゃ」に胸を打たれて抱き締める。
「うっししし！酔っ払いの女二人の出来上がり！」
「あら、襲っちゃだめよ」
「てか、このティアナさんどうすんの。ティアナさんって、本部に滞在してるんだよね？」
「ここに放置でよくね？」
「同盟ファミリーのボスの娘をそんな扱いにしていいのかい」
「いんだよ。恵、時間切れ。ジン飲め」
「なぬ！？」
飲め飲めコールをされては飲むしかない。
ノリでジンのストレートをぐびっと飲んだ。
思った以上にアルコールが強く、熱い刺激に恵さんと同じく蒸せた。
あ、だめだめ。こりゃ潰れる。
いつもアルコールの低いカクテルや酎ハイしか飲まないあたしも、これはヤバイ。
「うっししし！」
「恵さん、大丈夫ですかー？」
「ほら、水」
ベル君が水を差し出してくれたからこれを一気に飲み干した。
「ゲホゲホっ！！」
「うししー！いい飲みっぷり！」
「んまぁ！」
水じゃなくて、リキュールでしたっ！
くそうっベルめ！こんにゃろ！
頭が重くなってグラグラしてきた。
「うー、せかいがまわってるぅ」
「おい、次ティアナだぜ」
「もう、よしなさいよ」
「恵さん、反応なしですよー」
上を見上げて天井を見つめる。
ティアナさんはあたしの膝の上。寝ちゃったのかな。
ぼんやりとしてたら涙が滲んできた。
ふわふわと睡魔に襲われたから、そのまま眠ろうと思った。
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