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069 恵視点

繋がってて消えていかない人が、いるとは思わない?
誰か一人でも…たった一人。
強い結びつきで繋がった人がいるんじゃないかって思ったことない?














頬を撫でられて、目を開く。

ぼんやりした視界の先には、スクアーロ。


「治ったか?頭痛」

「………うん…おかえりなさい」

「…ああ、ただいま…」


起き上がってみても頭に少しの違和感しかない。痛みは取れている。

寝起きだからボンヤリとしてれば、頭を撫でられた。


「……その…」


ベッドに腰を下ろしているスクアーロは、口こもる。


「…なに?」

「……悪かった…」

「え?」


見つめていればスクアーロが謝罪してきた。


「…すっぽかして悪かった」

「………」


もう一度謝罪の言葉を口にして、後ろに隠していた花束をあたしに差し出す。

赤い薔薇の花束だ。


「柄じゃないね」

「うっ」

「ティアナさんから怒ってるって聞いたんでしょ」

「うっ」

「ティアナさんからのアドバイスなんだね」

「ぐうっ」


ティアナさんからすっぽかしたことを怒ってると聞いてアドバイスをもらい花束を買ったのだろう。

花とスクアーロなんて似合わない。

図星をつかれて俯くスクアーロ。


少しの間、沈黙。


「……あのね、スクアーロ」

「少しだけ」


あたしが言いかければ、スクアーロが遮った。

見上げるとスクアーロが見つめている。


「少しだけ…我慢…してくれ」

「……」


ティアナさんは何処まで話したのだろうか。

取り持つために多分ほとんど話したんだろうな…。いい人だ。

あたしは伝えられないもん…。


「どれくらい?」


悪戯に聞いてみた。


「え、あ……1週間だ、1週間」

「1週間、あたしにぼっちでいろって?」

「1週間すりゃあ…暇ができるからよぉ」

「だから?」

「…だから…」


俯いていれば顎を摘まみ、顔を上げさせられる。


「ここにいてくれ…恵」


親指で頬を撫でてスクアーロは真っ直ぐにあたしを見つめた。

あたしはスクアーロの顔を見つめる。


彼の髪、眉毛、目、鼻、唇、顎。


記憶に刻むように見つめた。


「ねぇ、スクアーロ」


スクアーロの瞳を見つめ返す。


「……」

「……」

「……あ…の…」


一体何を言うか、忘れてしまった。

言葉に詰まって顔を伏せる。


「なんだぁ?」


またスクアーロはあたしの顔を上げさせた。


「あのね…」


口を開くも、言葉がでなくて吐息だけを溢す。

言えなくてまた顔を伏せようとしたが、スクアーロがそれを許してくれない。


「う゛お゛ぉいっ!なんだ!?気になんだろ!」

「…う…」

「誘ってんのか?っていてぇ!」


スクアーロの髪を引っ張る。誘ってないもん。

唇をキュッと結んで逃げたい衝動を抑える。熱くなってきた。




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