064 「ほら、マゾ」
「恵ちゃんたら、フランと泥だらけになってたのよ」
「ガキかよ」
「ミーより恵さんが子供でしたよ」
「恵は見た目も中身も子どもだぁ」
スパコーン。
笑顔のまま恵はスクアーロの頭を叩いた。
「う゛お゛ぉいっ!なんでオレだけっ」
「いや…君しか叩く奴いないじゃん、マゾ鮫」
「マゾじゃねーぞ!」
「え!?」
「驚くんじゃねぇ!!」
スクアーロとのいつもの調子で会話。
そこに吹き出してクスクスッと笑う声がした。女性の声だ。
恵ではないなら、ティアナ。
口元に軽く握った左手を添えている。
気品ある横顔でちゃんと笑みが見えた。
(おお、ティアナさんがまた笑った!)
さっと恵はティアナより奥に座るXANXUSに目を向ける。
XANXUSはティアナを横目で見ながら食べていた。
フラン以外の幹部達もまた、驚いた反応をしている。
「ほらさ、あれよ。スクアーロって暴力受けるのわかってて真っ直ぐ行くじゃん。ボスさんに。まるで暴力を受けにいく感じじゃん!」
「オレは暴力受けにいってんじゃねぇえっ!!」
「そんなばかなっ!」
「う゛お゛ぉいっ驚くんじゃねぇ!」
またティアナは吹き出す。
両手で唇を押さえている。
(ウケてる!なんかティアナさんがウケてるよ!)
(オレをいじってティアナを笑わせてんじゃねぇ!!)
キラキラした瞳で恵はスクアーロに伝える。スクアーロも顔をひきつらせて伝えた。
だが恵は目を輝かせて、興奮をしている。
ティアナが笑ったことに喜んでいた。
まったく、と呆れる反面愛しくて恵の頭を撫でるスクアーロ。
そんな恵とスクアーロを、ティアナの笑いの次にポカーンとする幹部一同。
そんな二人に、空の皿がブーメランの如く投げられた。
それが恵の顔面を直撃する前にスクアーロが腕で代わりに受ける。
「いってぇっ!!なにしやがる!?」
「ほら、マゾ」
「ちげぇええっ!今のはお前を庇ったんだぁあ!!」
またもやティアナが笑った。
顔を両手で押さえてワナワナ震えてる。そんなティアナを睨みつつも、皿を投げたXANXUSが言った。
「カスが。時間だろ」
その言葉に幹部達が立ち上がる。
仕事の時間のようだ。
帰ってきたばかりでまた任務に出掛けるのか。恵は俯く。
「じゃあ行ってくるぜぇ、ボスさん。…恵」
くしゃっ、と頭を撫でられた。
顔を上げればもう扉に行っている。
「気を付けてね、フラン君、ベル君、マーモン君、ルッスーリアさん」
と恵は四人にだけ笑いかけた。
「う゛お゛ぉいっ!?オレは!?」
「ほら、時間よ」
肝心の自分だけが呼ばれなかったスクアーロだったが、つーんと恵はそっぽを向く。
時間が押してるため、ルッスーリアが急かして行ってしまった。
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