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061 「………」




ぼんやりしていたら、ザァアッと言う音が響いて起き上がった。

カーテンに覆われている窓に向かえば、その向こうは薄暗い。

雨が降り注いでいる。
雨音がただただ響いた。


(…憂鬱になるな……)


冷たい窓ガラスに額を重ねる。








コンコン。


鳴り響くノック音に意識を戻された。

いつの間にか窓の外は暗く、部屋も足元が見えないほど真っ暗だ。


記憶を頼りに扉に歩いて開けば、廊下の明かりが差し込んできて顔をしかめる。

扉の向こうにはティアナ。


「…寝ていたのですか?」

「うん、ちょっとだけ。ご飯の時間ですか!」


ティアナに恵は笑顔を見せる。

ダイニングルームで食事をすると言われたのでついていけば、そこに見知った顔が揃っていた。


「あ、恵さん。こっち、どーぞ」

「ありがとー、フラン君。紳士だね」

「ついでにティアナさんも、どーぞ」

「Grazie」


直ぐ様フランが椅子を引いてくれた。恵もティアナもその椅子に座る。


「居候じゃん」

「恵ちゃん、昨日ぶりね」

「スクアーロはまだなのかい?粘写してやった分のお金が振り込まれてないんだけど」

「どうも、ルッスーリア。ちゃっかり請求なんて流石だね!マーモン君!多分今日中には戻るかと」


向かいの席にはベル、ルッスーリア、マーモン。

一番奥にはXANXUSもいた。


「XANXUS…例の書類は?」

「あ?知るか、自分で探せ」


ムシャムシャと肉を頬張っていたXANXUSに話し掛けたのはティアナ。


「重要な書類だと言ったでしょう」

「…チッ。面倒な女だな。飯をオレの部屋に運べ」


舌打ちをしてXANXUSは席を立ちダイニングルームを出た。

ティアナも席を立つ。

「少し外しますね」と恵に告げてから料理を運んで行った。


「………」

「………」

「………」

「………」


妙な沈黙が降りる。


「お似合いじゃない?じゃない?」


首を突っ込むなとスクアーロに言われたが、言わずにはいられなかった。


「は?あのムカツク女が?ヘドが出るし」

「でもティアナさんに暴力振るわないんでしょ?」

「あー確かに…みたことないですねー」

「でもそれとなく聞いてみたけど、二人にその気なんてないみたいよー?」

「くだらないね。他の話をしなよ」


マーモンに言われるが、話題はXANXUSとティアナの話のまま進んだ。


「でもさ、なんかさ、こうさ……んー!雰囲気あると思わない?表現できないのがもどかしい!」

「でもただの幼なじみ、仕事仲間って感じよ?」

「二人っきりの時は?なに話してるのかな?聞いたことない?」

「お前ハイエナみてーだな」

「立ち聞きしたらカッ消されますよー」

「…君達、いい加減にしなよ…」

















コポコポ。

リキュールをグラスに注ぐ。

静かな時計が差すのは時間は十一時。

スクアーロの帰宅する音は聴こえてこなかった。

グラスに注いだそれを飲んでから恵はベッドに倒れて、目を閉じる。













温もりを感じて目を覚ませば、いつの間にか帰ってきたスクアーロの腕の中。
















再び目を覚ました時には、一人ぼっちのベッドの上。

スクアーロの部屋なのに、スクアーロがいない。


テーブルの上に、書き置きがあった。

任務に行ってくる。

その字を眺めてポツリと思った。


「…下手くそな字…」









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