002
「誰だ!?なんなんだ!?どうゆうことだぁ!?」
「声でかすぎ!もうっ!」
突き刺すような鋭い声に問い詰められて思わず耳を押さえる。
怒られてるみたいで嫌だ。
「落ち着いて。えっと……これ。これみて。落ち着いてね、ここはあなたのいた世界じゃないの。よくわからないけど、起きたら異世界に来ちゃったみたい。あたしの世界ではあなたは漫画の登場人物」
本棚の漫画を手に取り彼の肩を撫でながら説明する。彼は驚愕と困惑の顔をした。
まるで漫画の中からまんま飛び出してきたみたい。
「あ、コーヒー淹れてくる。一人で整理してて」
コーヒーを淹れて飲ませよう。落ち着くだろうから。
あたしはコーヒーを淹れに向かった。
漫画の中の登場人物が朝起きたら隣にいたなんて幸運が実現したなんて。
弛む口元。
エスプレッソストレートで構わないかな…?生憎あたしはミルクを入れない派だから砂糖しかない。
二つ分のコップを持ってあたしのみそぼらしい部屋に戻ると、彼は難しい顔をして漫画と向き合っていた。
「大丈夫?理解できた?」
声をかけてコップを差し出すとギンッと鋭い目つきで睨んできた。
これが殺気というものだろうか。ゾクッと戦慄が走る。
がしりと片手で口を押さえ込まれた。
「マーモンとベルの悪戯じゃねぇだろーなぁ?」
「こんな手の込んだ悪戯はさすがにないと思われる…。あたしは幻覚じゃないし、あなたも違うでしょ?」
「あちっ!」
頬を潰されながら喋ってあたしは手が塞がっているからコップを彼の頬につけた。熱をもったコップは熱かったらしい。
「あ、でも。悪戯かも」
とあたしが言えば彼はまた睨みつけた。
「異世界にきちゃうなんてさ、神様の悪戯でしょ?」
あたしは笑ってもう一度コーヒーを差し出す。
彼はあたしを睨んでからコーヒーを睨んだ。毒を警戒しているのだろう。
あたしは自分のをテーブルに置いて彼の分のコーヒーに砂糖を入れて、スプーンを突っ込んでそのスプーンをあたしの口の中に入れた。
毒はないでしょ?とあたしはまた差し出す。
ようやく彼は受け取った。
「じゃあ2人で整理しましょうか」
「…先ず、てめぇは誰だ」
自分のコップに砂糖をいれて香りを堪能してたら彼はあたしの名前を訊いた。
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