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059 「バカップルじゃん」




「あ。髪カールしてねー」

「普段はこの髪型なんだ」


談話室にいけば、そこにはベルフェゴールとフランと何故か山本とティアナがいた。

ベルから話し掛けてきたので恵は答える。
昨夜は着飾って髪を巻いてたが、普段はただおろしているだけが多い。


「なんでてめえらがいんだぁ?」

「車使うこと思い出してな、ティアナに送ってもらったんだ」

「相変わらずぬけてんな」


山本にスクアーロは車の鍵を投げ渡した。


「ここに住むなんて物好きですねー」


フランが恵に話し掛ける。


「ただの居候だよ、スクアーロが譲ってくれなくてねぇ」

「恵、ここにいろよ」

「ハーイ、パパ」


フランとティアナの間のソファーに腰を下ろせば、スクアーロに言われたので紅は冗談で返事をする。


そこでいち早く笑ったのは、意外にもティアナだった。


掌で口元を隠して笑みこそは見えなかったが、確かにティアナが吹き出したのだ。


「ははは」とあとから山本が笑うが、ベルもスクアーロもティアナに目を向けている。


ベルは口をあんぐり、スクアーロが不可解そうに顔をしかめた。

どうやらティアナの笑うところを初めて見たのはスクアーロとベルと恵だけのようだ。


「…動くなよ、希薄姫」


スクアーロは恵に目を戻してそれだけを言い残して去る。


「キハクヒメ?なにそれ」

「あー、あだ名よ。あたしはスクアーロをカス鮫と呼んでる」


ベルに問われて恵は笑って答える。


「皮肉を込めたあだ名」

「なんか…ラブラブだな!」

「皮肉を込めたあだ名なのにラブラブですか…?」


ポカーンとフランが山本を見上げた。


「キーモ」

「そこまで?」

「ベルの意見だから気にしないでください。恵さん」

「バカップルじゃん」

「バカップル…ショックだ…」

「そんな風に呼びあうバカップルってありなんですか?」


ベルの言葉にショックを受ける恵。


希薄姫とカス鮫と呼びあうバカップル。

そもそもカップルなのか?

恵の疑問はそこに向かう。

あたしのこと好きなの?、なんて確認して問えるわけがない。


視線に気付いて隣のフランに顔を向ける。


「なに?フラン君」

「今は素っぴんですかー?」

「え?う、うん…」


普段から素っぴんが多いがほとんどの場合マスクで隠してしまう恵は、フランにじーと見上げられて慌てて両手を隠す。


「じゃあ恵さんは素っぴん美人なんですねー。ミーの知ってる人は素っぴんになるともうオバケみたいですよ」

「もう、やだなぁ。照れるじゃん。誉めてもなにもでないぞー。あ、お菓子あるよ。食べる?」

「でた」


年下に言われては悪い気がしない。
恵は照れつつもスクアーロと買った袋からお菓子を取り出した。



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