053 「お持ち帰りってやつだな」
「それからスクアーロさんがあちらの世界に留まったのは、彼自身が恵さんのそばにいたいと思ったからなんです。恵さんもまたスクアーロさんに居てほしいと思ったから、彼は留まっていたんです」
「世界を越えるほど強く愛し合っているってわけか。おあついねぇ」
ユニの解説とγの茶化しに、恵は必死に掌を扇いで熱くなった顔を冷やそうとする。
「じゃあ、じゃあなんであたし来ちゃったの!?スクアーロが帰っちゃう予感がしてたけど、なんであたしまで!?」
「それは恵さんの帰したいという気持ちとスクアーロさんの帰りたい気持ちが一致したからです。そしてスクアーロさんが────連れ帰りたいと願ったからだと思います」
ピタリと恵は手を止めた。
「じゃあ奴のせいであたし来ちゃったの!?」
「お持ち帰りってやつだな」
「わっ笑わないでください!γさん!」
原因はスクアーロ。
恵は激しく怒りが沸いてきた。
「先程スクアーロさんが言ったように、スクアーロさんはあなたを放したくないのでしょう」
ユニがにこやかに言うものだから、恵はまた顔を赤くする。
「運命の相手同士、求めあったからこそこの奇跡が起きたんですよ。恵さん」
「…………」
パタパタ、と両手で扇ぐ恵は俯く。
「異世界から連れ帰るくらい、スクアーロの気持ちが強いってことね」
ティアナの呟きにまた恥ずかしくなって俯く恵。
「気持ちっていうか……愛だな」
流石イタリア人なγにまたまた顔を下げる恵。
スクアーロに愛されていることを他人に強調されて、嬉し恥ずかしい。
嬉し恥ずかしいと思っていることが恥ずかしい。
「だっ…大丈夫?」
綱吉が心配して声をかけた。
「うん……うん…その……なんか突拍子すぎて……ちょっと一泳ぎしようかな」
「水ない水ない!!」
よろよろとバルコニーの手摺に行き、風に当たれば下にプールを見付けて恵は呟く。
春前で水の張っていないプールだと綱吉は素早く教える。
恵が身投げする勢いだったからだ。
「異世界の運命の相手が強く願ったから連れてこられた……まぁ、なんて素敵なラブストーリーなんでしょう」
「現実逃避!?」
「シンデレラと不思議の国のアリスが混ざったみたいだな」
「ふっ……帰って仕事したい」
遠い目をする恵を激しく心配する綱吉がおろおろ。恵は自嘲するように吹き出してから突っ伏する。
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