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050 (…紳士だ…)




強引に手を振ったが意地でも放さないのか、スクアーロはしっかりと握り締めた。


「放してよ!」

「う゛お゛ぉいっ!!なんで放さなきゃなんねーんだ!!」

「いいから!」

「放さねぇぞ!!」



廊下のど真ん中でついに二人は立ち止まり叫ぶ。


ブンブンと手を振っても手は離れない。

成人した男女が繋いだ手を振るという光景を立ち尽くすしてみているのはティアナ。
ともう一人。


「スクアーロ!!」

「…あ?」


最終的にはスクアーロの握力に負けて恵が降参。

そこに青年が一人、歩み寄る。


「山本かぁ」

「よかった!無事で!」

「う゛お゛ぉいっ!オレがどっかの誰かに殺られたとでも思ったか?」

「だってよー、全然見つかんねーんだもん。心配するっつーの」

「余計なお世話だぞ!」


片や爽やかに笑い、片や睨み付けて怒鳴っている。

噛み合わなそうな光景を恵がポカーンと見ていたら、長身の青年が顔を向けた。


「オレ、山本武。よろしくな」

「あ。あたしは菊姫恵です」


ニカッとフレンドリーに挨拶されて恵は握手を求められたので手を差し出そうとしたが、左手はスクアーロに握られたまま。

左手で刀を持っていた山本はスッと持ち変えて、右手を差し出した。右手で握手。


「スクアーロを助けてくれてサンキューな」

「え?助けたなんて…そんな」

「武さん。皆さん待ってるんでしょ」

「あ、そうだった。悪い悪い」


ティアナに言われて思い出した山本は握手したままの恵の手を引いた。

それをスクアーロが切るようにチョップをして引き離す。


「………」

「………」

「………」

「………」


何事もなかったかのように、スクアーロは恵を連れて先を歩いた。









案内されたのはバルコニー。

そこにあるテーブルには二人しか席についていなかったが、その周りに数人が立っていた。


「連れてきました、ボンゴレ十代目」

「あ、ありがとうございます。ティアナさん」


ティアナの声に緊張した様子で立ち上がるのは茶髪の青年。

もう一人、席についていた少女も立ち上がる。

恵はスクアーロに繋がれたままの手を隠すようにして立って会釈をした。


「菊姫恵です」

「沢田綱吉です」

「ユニです。どうぞ」


席に座るようにユニが掌で指す。

座る前になんとかスクアーロの手を振り払おうとしたが、先にスクアーロからすんなり離してくれた。

驚いていればスクアーロが恵のために椅子を引く。そして恵が腰を下ろしてからスクアーロもどっかり座った。


(…紳士だ…)


今の動作に驚いたのは沢田綱吉も同じらしくギョッとした顔でスクアーロを見ていたが睨まれてバッと逸らす。





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