049 (…好きだよ、スクアーロ)
指を絡めあって握り締める。
貝殻繋ぎとも言う恋人繋ぎをした手を菊姫恵は見つめた。
希姫が運転する車の後部座席にスクアーロと一緒に座ったのだが、十分くらいしてスクアーロは寄り添ってきて凭れてきたかと思えば眠ってしまったのだ。
身長差で恵の頭にスクアーロの頭がのし掛かる。
徹夜明けの寝不足故の居眠りなのだから、邪険にできず恵はじっとした。
じっとしてスクアーロを支えていると彼と繋いでいる手しか目に入らなくて頬が熱くなる。
(なんで…恋人繋ぎ…)
落ち着いて考える時間がなかったが、今直面して考えた。
スクアーロとの関係。
キスをしてしまい、気持ちを明かしてしまった…のかどうか曖昧。
順番が違うが添い寝してキスをして、スクアーロはその後の関係に進みたがってる。
(………その前に…)
ちゃんと気持ちを確認しなくてはいけない。
(…ううん、違う。違う)
そうゆうことなんじゃない。
(…好きだよ、スクアーロ)
自分の気持ちはわかっている。
スクアーロの気持ちも伝わっていた。
(……それでも)
無意識に力を込めてスクアーロの手を握ってしまう。
それでスクアーロが起きた。
「…どうした?」
眠気のある声で問うスクアーロのせいで胸の奥がギュッと締め付けられる。
返答がなかったためスクアーロが顔を覗く。
恵は目を閉じて寝たフリをした。
気のせいだとわかりスクアーロは恵の頭を自分の肩に凭れさせてまた目を閉じる。
その優しさに恵は唇を強く結んだ。
そんな二人の様子を見ていたのは、バックミラーを見つめるティアナ一人だけ。
スクアーロに手を引かれたままズルズルと恵は引き摺られるように歩く。
「う゛お゛ぉいっ!ちゃんと歩け!どうしたんだぁ?」
「いや…だって…王室みたいで…立ち入り区域をしてしまったみたいで…」
「大袈裟だなぁ。なんなら姫らしく抱えてやろうか?」
ボンゴレ本部はお城の如く。
ヴァリアーの屋敷もそれなり大きかったが、本部は明るくきらびやかで恵は躊躇する。
触ってはいけない歴史の高級品に感じて奥に行きたくなくなった。
それをスクアーロは呆れてお姫様抱っこすると脅すから紅は諦めて歩く。
ヴァリアー諸君にスクアーロとのキスシーンを見られて、ボンゴレ諸君にスクアーロにお姫様抱っこされてるところを見られては恥ずかしすぎて死ぬ。
ハッとして気付く。
今まさに恋人繋ぎをしてるではないか。
彼らに会う前にこれを解かなくては!と手を離そうとするが、スクアーロの方は離そうとしないので手が離れやしない。
いくらもがいても指の間に指を入れて握られては外せない。
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