126「運命の相手はいるよ。君にも、きっと現れるから」
二週間近くぶりのヴァリアーの屋敷。
恵は嫌がるスクアーロに頼み込んで、ベルの部屋を教えてもらった。
「…鍵かかってたよな?」
「ピッキング」
スクアーロがピッキングで鍵のかかった扉を開けてくれて、恵は入ったのだ。ベルはベッドに横たわっていた。
「ありがとう、ベル君」
「……」
恵の礼の言葉に、ベルは反応を示さない。
「嫌な思いさせて、ごめんね」
「………」
「ありがとう、ベル君」
「………」
「…じゃあ、おやすみなさい」
謝ってからもう一度礼を云う。
他に言うこと思い付かなかった恵は、部屋を出ようとした。
「なんで」
ベルは起き上がり、口を開く。
「なんでオレじゃないんだよ」
手に入れたかった。
だが唇に触れれば毒を盛ったかのように、恵は死にかける。
スクアーロだけだ。
恵を手に入れられるのは、スクアーロだけ。
スクアーロが運命の相手だから。
運命の相手だから。
何故自分ではだめなんだ。
何故自分が恵の運命の相手ではないんだ。
「君の運命の相手は、他にいるからだよ」
恵は笑って言った。
苦しくなってもがくように、ベルは返す。
「オレは恵がいいんだ!」
「…ごめん。あたしの運命の相手はスクアーロだから」
運命の相手だから。
ベルはシーツを握り締めた。
運命の相手。
互いに惹かれ合う赤い糸で結ばれた存在。
恵は絶対に、手に入らない。
いくら欲しても、手に入れようとした瞬間に消える。
「…んだよ…。運命の相手運命の相手って…」
「ベル君。考えた? 自分の運命の相手」
ベルが俯いていれば、恵はベッドに腰を下ろした。
離れて見守っていたスクアーロは警戒して近付く。
「運命の相手はいるよ。君にも、きっと現れるから」
そう微笑んで告げてから、恵はもう一度「おやすみ」を言ってスクアーロとベルの部屋をあとにした。
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