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111 まるで刃物に刺されたかのようだ。



綱吉とXANXUSの挨拶が終わったところで、ティアナから恵はバルコニーにいると聞いてスクアーロは探しに向かっていた。


(本当にわからねぇ女だ…)


恵を連れ去ったくせに今度は仲を取り持つように背中を押してきたティアナにスクアーロは困惑を隠せない。


だが今はティアナよりも恵だ。


早々とバルコニーを覗きつつ、恵の姿を捜した。

一つのバルコニーにベルを見付けた。


口が動いているところを見ると誰かといるようだ。


顔を上げている。
上を見ている。


一階のバルコニーに恵はいなかった。なら二階のバルコニー。


ベルが話している相手は恵だと気付いたスクアーロは、向かう足を早めた。


その時だ。


ふわりと舞い降りた。


まるで羽根のように軽やかに舞い降りたのは恵。


黒い髪とともに、白いドレスのスカートが靡いた。その白がまるで羽根に見えて、天使だと錯覚してしまう。


黒のリボンが腰に巻き付いた純白のドレスを纏った恵に見惚れてスクアーロは足を止めた。


だが否応なしに、恵の目の前にいるベルが視界に入る。


ベルの前に現れた恵が、間入れずベルと唇を合わせた。


じわんり、怒りと嫉妬が込み上がりスクアーロの胸の中が支配される。

だが感情よりも、痛みが突き刺さった。


まるで刃物に刺されたかのようだ。


その痛みを振り払って、怒りを込めて声をあげようとした。


その前に。


恵は。


ほどけた糸のようにするりと───────────…倒れた。





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