108 「逃げたいです、10代目」
ドキドキと胸が高鳴る。
初めてパーティーに参加した日を思い出す。緊張した。
「逃げたいです、10代目」
「逃げないでっ!恵ちゃん!」
ボンゴレのパーティーは始まった。
ファミリーが集うパーティー。
まるで上級階級のセレブのパーティーのようにゴージャスなパーティー会場に目が眩む恵。
次元が違う。
ホテルのパーティー会場とは一味も二味も違う。
今までのパーティーが子どもの開くパーティーに感じてしまった。出版社が開くパーティーとマフィアのパーティーを比べても意味がないことだ。
マフィアのパーティーにいることは、百歩譲ろう。
だがそのパーティーの主催者であるマフィアのボスの綱吉の隣にいるのはやっぱり可笑しな話だと思う恵。
上層部に挨拶して回る綱吉に恵はついていく羽目となり、たびたびイタリア語で話を振られてしまいもう精神が持たない。逃げ出したい。
「なっさけねーな」
「あたし、いなくてもいいと思うんだ!」
「10代目がいろって言ってんだから居ろ!」
ともに綱吉について回る獄寺にも言われて恵は離れることを許されなかった。
「こんなみそぼらしい女が隣にいると…10代目の品格?威厳?に関わると思うのですが…」
「逆だぞ。恵はパーティーの花だ。ツナの隣にいることで引き立てるぞ」
「パーティーの花って…美女がわんさかいる中で……あれ?ティアナさんは?」
リボーンにシャンパンを渡されて恵は受け取る。そこでティアナがいないことに気付く。
「わたしならここよ」
「ティアナさん、ドレスは?」
「仕事が残っているし、わたしはボンゴレファミリーではないから」
振り返った先にいたティアナはいつものレディーススーツ。
ドレスじゃなくて残念だ。
「来たぜ!」
「誰が?」
「ヴァリアー」
「ヴァリアー!?」
少し離れていた山本が戻ってきて爆弾発言に驚くのは恵と綱吉と獄寺。
「え、聞いてないよ!」
「でも来ちまったぜ」
「奴らが来るなんて珍しいな…」
山本が指を差すが、着飾ったマフィア達でヴァリアーの姿は見付けられない。
「あたしっ、ちょっとバルコニーに、息吸ってくる!」
「え?あっ恵ちゃ…!」
グビッとシャンパンを飲み干してそのグラスを綱吉に押し付けてから脱兎の如く逃げ去った。
「息吸ってくるって…アイツ…」
「はは、そんなに会いたくねぇんだな」
もう姿の見えなくなった恵を見送って山本は苦笑を洩らす。
「…山本が呼んだの?」
「いいえ、わたくしです」
綱吉の問いにティアナが答えた。
「いつまでも引き留められては恵さんが持ちません。だから会って話をしろと言いました。バルコニーに行ったなら、二人で話せるでしょう。…とりあえず、XANXUSに挨拶をしに行きましょうか」
簡潔に事情を話してティアナは先を歩く。
だから恵をパーティーに参加させるように言ったのか。
(……大丈夫かな…恵ちゃん)
帰ってほしくはない気持ちがあるが、傷付いてもほしくない。
綱吉は心配したが、それより自分の心配をしなくてはならなかった。
水と油のように相容れないXANXUSとのご対面だ。
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