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106 (よりによって…銀色)



(ティアナさん、ドレスを用意するって言ってたんだよねぇ…。あ、でもティアナさんのドレス見てみたいなぁ)


四六時中綱吉に引っ付いている恵を気遣ってなのか、ティアナがドレスを用意をすると言ってくれた。


ドレスなら持っているが、偉大なボンゴレのパーティーにあんな安いドレスを着て綱吉の隣には立てない。


ティアナのドレス姿を想像する。

いつもレディーススーツのティアナは、スーパーモデルさまさまのスタイルの持ち主。彼女が着飾ったらまさかに高嶺の花になるだろう。

仕事も出来るマフィアのボスの美しい娘。高嶺の花だ。


(あたしが男なら、絶対にアタックして砕けてるな…うん)


もしも自分が異性なら、という起こり得ないもしもの話をして女子が友達を慰める台詞をなんとなく使いつつ書類を片付けた。


コンコン、とノック音。
噂をすれば影。ティアナだ。


「10代目なら山本さんを助けにいきましたよ」

「聞いているわ。彼と待ち合わせしていたからわたしが行ったのに…」

「友達なら尚更飛び出しちゃうよ」

「そうね…彼はそうゆうお方。…これを、あなたに」


ティアナは綱吉の書斎に入って、一つの箱を恵に差し出した。

何かと恵が首を傾げていれば、箱の中身をティアナが取り出して見せる。

銀色の銃だ。


「銃!?」

「ええ、護身用に」

「いやいやいりませんよ!」

「秘書として必需品。携帯しろってリボーンからの命令よ」


リボーンの命令では逆らえない。

強引に持たされた銃は改造エアガンより重みがあった。


「暴発したらどうしようっ…」

「扱い方は教えるわ。これホルダー。明日のパーティーで足につけて」

「パーティーでも持つの!?」

「ええ、あなたはキスひとつされるだけで命を落とす可能性があるのだから男から身を守らないと」


そのために銃を持てというのか。

襲われる前に撃て。

恵は強張った。


「そんなにイタリア人は手が早いのですか……?」

「シャマルは知ってるでしょ?隙あらば唇を奪ってくる。油断してはだめよ」


女たらしの医者を思い出す恵。

イタリア男は恵にとって天敵と化した。


「わたしも目を光らせるわ」


ティアナは恵の肩を撫でて微笑んだ。


安心感が沸いてきて恵は笑みを返す。

最初に比べて、ティアナは笑みをよく見せてくれるようになった。
嬉しい限りだ。


恵は銀色の光を放つ銃を見た。


(よりによって…銀色)


久しく見ていない銀色。
少し心の中が陰った。


















銀色の光がない。


今日こそはと思っても、目が覚めれば未だに慣れ親しめない部屋の中。


広い部屋に独りぼっち。


今日もこの世界に留められた。



今日も彼はあたしを放さない。



起き上がった恵は、ベッドに倒れこみ息を吐いた。








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