006
眠くなった頃にはお互いに"希薄姫"と"カス鮫"というあだ名をつけて呼んだ。
お酒を飲んだから無礼講。
「…本当にいいのかぁ?同じベッドで寝ても」
「理性は保てよ、カス鮫」
「う゛お゛ぉいっ!いつまでそう呼ぶつもりだぁ、希薄姫が」
「何であたしは姫なの?確かにあたしは高嶺の花だけども」
「希薄女って呼んだら殴ったじゃねーかぁ。つーかぁ姫って呼ばれてるほど美人じゃ…いてぇ!」
真横にいるスクアーロの肩に拳をいれた。
目が覚めた時と同じ、ベッドに二人で横たわる。
酒が入った成人男女が同じベッドにはいるなんて、間違いを起こしかねないが幸い二人はちゃんと意識あり。
枕に頭を置いて、互いをじっと見た。
妙な見つめ合いと沈黙。
「異性とただ添い寝って初めて?」
「……まぁな」
「ハン、やることやるだけか」
「るせーよ。てめぇはどうなんだよ」
「あたしはあるよ?弟とか」
「身内じゃねぇか!」
気まずいから話題を出してみると寝ようって時に大声を出すスクアーロ。
「変な感じだぜ…美人とたただ添い寝なんてな」
「変な感じだぜ…イケメンと添い寝なんてラッキー」
「ラッキーかよ」
「うん。楽しかったしね」
「…そうだなぁ」
うとうとしながらスクアーロは言う。
「変な1日だったぜ…」
「…ささやかな休暇じゃん、良かったね」
「…あぁ…」
睡魔に襲われているのだろう。
スクアーロが目を閉じた。
暗殺者のくせに無防備な顔。
「これで帰れなかったら……」
「ん……?」
「居てもいいか…?」
「…いいよ…」
すんなり頷いたらスクアーロは目を開いて笑った。
おやすみ、と頭を撫でてまた目を閉じる。
あたしも小さく返して目を閉じて眠った。
緩やかに落ちるかのように、そっと眠りに落ちた。
目を覚ました時、銀色はなかった。
本当に帰っちゃったのか。
確信なんてなかったけれど本当に、帰っちゃった。
起き上がってテーブルを見れば、昨日飲んだ缶。スクアーロと飲んだ跡だ。
ぽすんと横たわる。
いつもと違う香りに気付く。
スクアーロの匂いだ。
確かに君はここに、
居たらしい。
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