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空色少女 再始動編
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「なにこれ?」


目の前に置かれた長方形の箱に、紅奈は首を傾げた。


「ハッピーバレンタイン」


ニッと笑ってベルは言う。
2月14日。バレンタインデー。
ということは箱の中身はチョコレート。


「日本だと女が男にあげるんだよ、ベル」

「知ってる。でも紅奈が言ったんだろう? 男ならプレゼントしろって」


また綱吉からベルは情報を仕入れたらしい。
紅奈の適当な一言により、紅奈の小学校の二年生は逆チョコブームとなった。

男子が女子にチョコを渡して、中には告白している生徒もいた。

小学二年生でも告白とは、最近の子どもって奴は……。
とか傍観していた紅奈も、チョコを「友チョコだ!」と顔を真っ赤にして男子生徒数人に渡された。
流石に手作りチョコはなく、市販のチョコばかりだった。ベルもそうだ。
だがベルのは明らかに高級感が滲み出ていた。

お返しがめんどくさいと思っていた紅奈は、心底めんどくさがった。


「お返しは手作りチョコでい?」

「うしし、取りに来る」


包装紙を丁重にとって、早速紅奈は食べる。
生チョコレートだ。
一切れを口の中に入れれば、瞬時に溶けて滑らかな甘い味が広がった。


「うまっ」

「ししし、だろ?」

「うん。美味い」


その生チョコが気に入った紅奈から笑みが溢れて、ベルは嬉しそうに笑う。
その時だけは紅奈の笑顔を独り占めできたが、奈々と綱吉が出来上がった手作りチョコを持ってリビングに戻ってきた。


「んー、美味しい」

「ホントっ?」


綱吉にも同じ笑みを見せる紅奈を見て、気分は一変して最悪になるベル。

「オレのチョコと綱吉のチョコ、どっちが美味しい?」


ベルはしょうもない質問をした。

ベルは市販の高級な生チョコで、綱吉は奈々と一緒に作った手作り。

どちらが美味しいと問われれば、前者に決まっているだろう。


紅奈はチョコを見比べてから、綱吉と奈々を見た。
奈々はドキドキして待っていて、綱吉は不安げに見上げてくる。


「ツナ君とお母さんのチョコの方が美味しい」

「やったぁ!」

「……」


綱吉と奈々>ベル。

美味しさはベルのチョコだが、綱吉と奈々の手作りななら紅奈にとってその手作りチョコは高級な生チョコより価値がある。

よって後者が勝利。


純粋に喜ぶベルは睨み付けた。
殺気を感じ取り、綱吉は震え上がる。

ベルが綱吉に勝つまでまだまだ時間がかかるようだ。


絶対に紅奈の一番になってやる。






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