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空色少女 再始動編
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「お前ばかだろ」


二日後、立場が逆転した。
紅奈は椅子に座り、ベッドに横になるベルを見下ろす。

紅奈の風邪が移ってしまい高熱でダウンしたのだ。


ベルはカッコ悪い自分を見られたくなくて布団を頭から被る。


「あたしも病み上がりだから、今日は看病してやる」


治ったばかりの紅奈は笑ってベルの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。


…紅奈に看病されるのも悪くない。


「…わかるかも」

「ん?」

「……病気は…」


言いかけたがベルは言えず、また布団を被る。


「なぁに?」


首を傾げて紅奈は何を言いかけたのかを問う。
ベルが沈黙を返すからつつく。


しつこくつつくとベルはバッと紅奈のその手を掴んだ。


「…紅奈がそばにいてくれるから…嬉しい……」


小さくベルは呟いた。


「…紅奈がいなきゃ……余計苦しいかも…」


紅奈ほど病気で寝込んだことはないが、体験することでわかった。

身体が動かず熱で頭はぼんやりする。病気で弱りきっている時こそ、孤独を強く感じる。

こんな風なんだろう。


紅奈がそばにいなければ、恋しくて恋しくてしょうがなかったはずだ。


紅奈が恋しい。


今紅奈がそばにいることが嬉しい。


「あはは、わかってくれて嬉しいよ。あたしの王子様」

「!、やめろよっ」


ベッドに飛び乗って紅奈はぐしゃぐしゃとベルの髪を撫でた。


紅奈はわかってない。
紅奈はそばに綱吉がいてもスクアーロがいても嬉しいのだろうが、ベルは違うのだ。


紅奈だからこそ。

紅奈じゃあないと意味がない。


ベルの場合、人恋しくなるんじゃない。紅奈が恋しくなる。


そこのところを、紅奈はわかっちゃいない。


というか病人にちょっかいだすな。高熱だぞ。移し返されたいのか。







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