空色少女 再始動編
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「XANXUSにも話してないけど」
「お、尚更聞く」
「……前世は一人ぼっちだったんだ」
XANXUSの代わりになろうとするベルに、紅奈はXANXUSにも話していないことを口にする。
「…病気になると人恋しくならない?あたしの前世では…今みたいな病弱じゃなかったけど……こんな風に寝込んでた時はいつも…いつもそう、孤独を痛感してた」
ベルは囁くような紅奈の声を黙って聴いた。
「ううん…いつでも孤独だと思ってた…。誰といても…独りだと思ってた。……ほんと、現世は幸せだ。こうしてベルがそばにいてくれるから」
ふっと紅奈は微笑んだ。
いきなりで面食らうベルは赤くなる顔を隠した。
高熱を出してるのに、そんな風に笑うなんて反則だ。
「前世はすごく孤独だったけど、今あたしには綱吉がいる。それに優しい母、秘密主義だけど愛してくれる父。前世よりいい家族がいる。それから貴方達仲間がいる。あたしは幸福者でしょ?」
紅奈は本当に、今が幸せなのだ。
「…紅奈のそばに、オレはいるから」
「…うん」
「紅奈の幸せ、オレが全部守る」
手をきゅっとベルは握り締めて言う。
紅奈はまた笑った。
穏やかな笑み。
「頼もしい王子だね」
「…しし、当然。オレは紅奈の王子だもん」
橙色が入り交じる栗色の瞳を見つめ返して、ベルは笑い返した。
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