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空色少女 再始動編
356





目を開くと木の模様がある天井。

襖に畳。誰もいない。


ここは家……?


泣きたくなった。


身体は重く、頭は熱で思考が回らない。
病気で寝込んでも看病してくれる人はいない。

手元に携帯電話があっても助けを求める人が誰一人いない。


呼ぶ名前さえない。


孤独。


自分が独りだと気付いたのはいつだろう。


気付いても、死ぬまで孤独だった。


…死ぬまで?

そうか、あたし。


死んだんだった。












目を開くと白い天井。


顔を横に向けると、そこにベルがいた。


「……ベル…?」


手を伸ばして触れる。

柔らかな頬の感触。


「ベルだ…」

「王子だぜ、キング」


ベルは紅奈の手を握った。
ホッと紅奈は息を吐く。


「なんだよ、ため息なんてついて」

「安堵だよ…やな夢見たんだ」


風邪をひいて寝込んでいる紅奈のそばにベルがなんでいるかなんて気にしない。
また予告なしに遊びに来たのだろう。


「やな夢って?」


ゲホ、と紅奈は咳をしてから寝返りを打つ。熱はまだ下がっていないみたいだ。


「……前世」

「…前世?」

「…ゲホ……ベル、いつからいるんだ?移るから下に行ってろ」

「オレはヘーキ。で?どんな夢?」

「……」


ベルは内容を問う。
怪訝な顔をした紅奈の髪をベルは指で退かす。


「なんだよ、前世とそのまた前世だって知ってんのは今はオレだけだぜ?聞いてやるよ」


にんやりと言うベルに紅奈は小さく笑う。





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