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空色少女 再始動編
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「紅奈ちゃん、ほんと人気者だね!」


下校時に正一が言う。
下校時まで囲まれるのはごめんだから、いつも通り綱吉と三人で帰る。

綱吉は人気者に戻った紅奈が自慢で嬉しそうにニコニコ。


「そうね、ちょっと疲れる」

「休み時間ずっと走ってるもんねっ」

「遊ぶのは別にいいんだけど…」


小学二年生に囲まれて話すのは疲れる。

正一にそう言う前にすれ違った女子高生の携帯電話が鳴った。聞き覚えのある音に振り返る。


「どうしたの?コーちゃん」

「今の…あれよね、CMに使われてる。…タイトルわからないけど」

「あ、知ってるよ、僕。お母さんが好きでCD買ってた」

「いい曲だよね…。あたし空が好きだからそのワードが入ってると気になるの、メロディも素敵よね」


紅奈はそのフレーズを口ずさんだ。


そんな紅奈を見た正一はCDを貸すと言い出した。


「んー、嬉しいけど。うちにCDプレイヤーないんだ」


昔はあったが綱吉が壊してからない。


「あ、そうか…」

「ごめん、ありがとうね」


紅奈は笑ってみせた。











翌日。


「紅奈ちゃん、これ貸してあげる」

「アイポット?」


正一が紅奈に差し出したのは、アイポットとイヤホン。


「僕新しいのがあるから!紅奈ちゃんが気に入りそうな曲をいれといたよ」

「……ありがとう、正一くん」


いいと言ったのに、ここまでしてくれるとは。
不登校の時もそうだ。
紅奈のためにノートをとってくれた。

頼んでもいないのに、曲を入れた音楽プレイヤーを貸すなんて。

健気な子だな。


微笑んで礼を言えば、正一ははにかんで笑い返した。







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