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空色少女 再始動編
352




「いかないでっ」


何度も言う言葉。

それはまるで、離れてしまうことを直感でわかっているかのようだった。


綱吉と離される可能性があっても表舞台に上がることを決めたことを知っているかのようだった。


だからこその言葉に感じる。


「置いていかないで……っ」

「…いるよ、ツナくん」

「っいかないで」

「…ここにいるよ」

「…ずっといてっ…コーちゃん」

「ずっと、そばにいるよ…ツナくん」


紅奈は優しく抱き締め返した。











邪魔をしないようにベルは後退りして背を向ける。


王子の勘は的中した。


紅奈が綱吉と離れられるわけがないんだ。


「悪いけど、アンタと違ってあたしと綱吉は運命共同体だから。殺しあいなんてしない」


初めて会った時からそう。
紅奈は自分と違い片割れを大切に思っていた。


「うざくもうっとうしくもない。消えてほしくない片割れなの。あたしの大事な弟に変なこと吹き込まないでくれる?」


何があっても、紅奈の最優先順位は綱吉。
それが紅奈らしい。


紅奈の幸せに、綱吉は必要不可欠な存在だ。


「…ほんと、ムカつく…」


頭の後ろで腕を組んで、ベルは呟く。


















「どうしたの?ツーくん」


落ち着いた頃に紅奈は綱吉に涙のわけを訊いたが、綱吉は同じことを言う。


「コーちゃんにいかないでほしいんだ」


ただそれだけ。


手を繋いで店に戻れば、9代目は帰ったあとでピザが焼き上がっていた。


それを食べてから、いよいよ帰国だ。


泣き疲れた綱吉は車の中で紅奈の膝の上で少しの間眠った。

弟の髪をそっと撫でて見つめる紅奈をベルは頬杖をついて見つめる。


「お母さん、次はいつイタリアに来る予定?」

「次はぁ…春休みかしらね、あなた」


ベルは助手席の奈々に問い、奈々は運転席の家光に訊く。


「いや、春休みは…ちょっと休みが取れそうにないなぁ…」


ベルが奈々をお母さんと呼んだことに顔をひきつらせつつも奈々に笑顔で答える。


「じゃあオレが遊びに行ってもいい?」

「もちろんよ!いつでも遊びにいらっしゃい!スー君もベル君も大歓迎よ!」


鮫もかよ。と思いつつも許可をもらったベルはニッと笑みを浮かべた。

紅奈にも遊びに行くと言おうとしたが、紅奈は眠っていた。


綱吉を膝で寝かせたまま、顔を俯かせて静かに寝息を立てている。
車の揺れに合わせて紅奈の頭は小さく揺れた。


ぽかーん、と見ていたベルはやがて起こさないように慎重に手を伸ばす。
ゆっくり紅奈の肩に腕を回して引き寄せれば、ベルの肩に紅奈が寄り掛かる体勢の出来やがり。


この方が紅奈は楽だろう。

ベルも欠伸を漏らして、紅奈の頭に頬を置いて少し眠ることにした。


「あらあら」


仲良く寄り添って眠る子ども達に気付いた奈々はカメラを手に取った。





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