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空色少女 再始動編
284 沢田綱吉










「っ…コーちゃん〜っ!!!

「ツナくんっ」


しかし安易に紅奈から手は外される。

紅奈の最愛の弟のために。


ホテルの入り口で両親と紅奈の到着を待っていた綱吉が駆け寄り抱き付く。

紅奈は受け止めて両手で抱き締めた。


何があっても、紅奈の最優先順位は綱吉だ。


面白くないベルは唇を突き上げる。


「どうしたの?ツナくん」

「……」


目尻に涙を貯めている綱吉の頭を撫でながら、穏やかで優しい笑みで紅奈は問う。

そんな最愛の姉を綱吉はきょとんと見上げた。


「ツナくん?」

「…あ、あのねっ…」


少しだけ頬を赤らめてから綱吉は俯く。


「こわい……ゆめ…みたの…」


久しぶりに紅奈とうんと離れて眠ったせいで、綱吉は悪夢に魘された。


「どんな?」

「………すごく……こわくて………かなしかった…」


どんな夢だったかなんて、もう答えられない。
忘れてしまったのだ。

だけど怖くて、悲しかったことは覚えている。

すごく、すごく、悲しかった。


「コーちゃんに……会いたくなったんだ…」


どうしてだか、綱吉にもわからなかった。


ただ真っ先に紅奈を探した。

だけど紅奈がいなくて、余計に怖くなって悲しくなって、泣いた。


綱吉はめいいっぱい紅奈を抱き締める。


「そっか、ごめんね。すぐに来れなくて」


謝る姉に弟は首を横に振った。


ううんっ!いつものコーちゃんのえがおをみたら、だいじょうぶになったから!


紅奈の笑みをみたら、そんなもの吹っ飛んだ。


いつもの紅奈だ。
いつもの優しく強い大好きな姉。
ただそれだけで、恐怖も悲しみも吹き飛んだ。


綱吉の嬉しそうな笑顔を見て、紅奈は年相応の可愛らしい笑みを溢した。


















空に虹の光が輝く



その空は


誰かを照らしていく










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