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空色少女 再始動編
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全てが橙色に染められている。


色鮮やかな花も緑豊かな草葉も、自分達も夕陽に照らされた。


幾度も足を運んだこの庭園。

どれぐらいの時間、ここに居ただろうか。
どれぐらいの時間、彼女と過ごしただろうか。

君に与えられた穏やかな時間は、一体どれぐらいの時間だっただろう?


腕の中の君は、微笑む。


彼女の長い金髪は夕陽に橙色に染まり温かな輝きを放つ。


彼女が比喩したように、宝石のように煌めいていて美しい。
その温かさは、彼女そのもの。


いつだって彼女は、オレ達を照らした。


幾つもの時間を思い出す。
どれも楽しく穏やかで包み込むような優しさがそこにあった。

彼女はいつだって、オレを照らして背中を押してくれた。

彼女はいつだって、光であってくれた。


そして。

その光が。

消えていく。


彼女が目を閉じた。


もう彼女がその瞳で見つめることは、二度とない。


泣き叫んででも君を引き留めたかったのに、それはできなかった。

君が最後まで泣かなかったから。

君は、いつだって。

涙を見せなかった。


最後まで。
最期まで。


彼女が緩やかに死を迎えるのを腕の中で感じた。


この腕で抱き締めているのに、彼女はすり抜けて消えてしまう。


こんなにも近くにいるのに、彼女の命を繋ぎ止める術がない。


いかないでくれ。


いかないでくれ。


そばにいてくれ。


堪えていた涙がついに溢れて落ちていく。


いかないでくれ。


震える声で小さく呟いても、もう彼女には届かない。


いかないでくれ。


震える腕で抱き締めても、もう彼女は目を開かない。


いかないでくれ。


いかないでくれ。


オレを。

オレを置いて。


いかないでくれ。


いかないでくれ。


いかないで────────…。
















オレの光が、遠くにいってしまった。



























†いかないで

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