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空色少女 再始動編
283 ベルフェゴール






「じゃあコイツには何て言う?」

「助けたから貸しだってスクが言えばいい、時期が来たらあたしが助けたから貸しを返せっていうから。じゃああとはよろしく」

っう゛ぉ゛おおい!?待て!跳ね馬をどこに運ぶんだ!?


ディーノを担いだら、紅奈はさらりと押し付けてベルと歩き出した。

押し付けるならちゃんと何処に運べばいいか教えてくれ。


「知らん。」


丸投げ。


「!!、待て!紅奈!恋人の件は!?どうゆう意図があるんだ!?」

「なんとなく」

「なんとなくで嘘つくなっ!誤解といておくからな!」

「とかなくてもよくない?別に問題ないだろ」

「問題あるだろ!同盟ファミリーなんだからそ…………」


押し付けられるのは百歩譲れるが、恋人の件は誤解をとかないと。

ディーノはスクアーロの同級生であり、紅奈がボスになった時には同盟ファミリーのボス同士だ。


だから恋人なんて嘘…………。

……………。

………。

…あれ。

………問題ない?



別に恋人がいようが誰であろうと、支障がなければ問題ない。


「スクに本物の恋人も婚約者もいないなら、別にディーノにそう思われてもいいじゃん」

「…………」


い、いいのか?
いいのか?


スクアーロは難しい顔して、紅奈とベルを見送り去るのを見つめて立ち尽くした。








「紅奈ぁ、なんでそんなに機嫌がいいん?なにがあったの?」

「なんで?」


手を繋いでホテルに向かって歩くとベルが訊いてきた。

恐らく先程紅奈が会っていた女が理由なんだろう。


「知りたい。紅奈が昨日までオレ達を突き放してたのに、突然気を変えた理由を」

「こうしたいって思ったから」


ぽんっ、と紅奈はベルの頭を撫でる。


ベルのキングで居たいと思ったから


ニッと笑った。
目映いほどの明るい笑顔。

それだけでも嬉しいが、紅奈からまたキングになるというのは喜ばしいことだった。


ベルの世界の中心は紅奈。

ベルの世界の頂点が紅奈。

ベルのキングは紅奈。


紅奈は特別な存在。


ぎゅうっと紅奈の左手を握り締めて、肩を寄せて歩いた。


「そうだ」


紅奈がくるりと自分より頭二つ分近く上にあるベルを見上げる。
寄り添っていたベルが顔を向ければ、自然と顔は近くなった。


「昨日したことは許してやる」

「!」


にやり、悪戯に笑って紅奈はベルの唇をチョンッと左手の指でつつく。

ベルに動揺が走った。

頬がカアッと熱くなる。


紅奈は満足したように歩き出す。

手を繋いでいるため逃げられないベルは連れていかれる。


(…………………小悪魔まで完全復活した…)


せめて情けなく真っ赤になった顔だけは見られないように顔を背ける。


触れる肩から。触れる手から。


乱れた心音が伝わっている気がする。


見上げてきたあの紅奈の見透かすような瞳だけでも十分動揺する要素なのに、この近距離ではいつまで経ってもおさまりそうにもない。


(熱すぎ…)


照らしてくる太陽。ハワイの暑い気温の追い打ちで、紅奈の小さく柔らかい手を握った手が汗ばかないことを願った。


それでも幸せで、ベルは放したくなかった。











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