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空色少女 再始動編
338 犯人



気を取り直して紅奈はマーモンに手を差し出した。


「カメラ」

「あ、うん」


マーモンがベルの部屋に来たのは、紅奈にビデオカメラを頼まれたからだ。

マントの下からマーモンはビデオカメラを紅奈に渡そうとして、慌てて引っ込めた。


「な、なにが見たいんだい?」

「酒を盛った犯人が映ってるかも知れないから、見るのよ。貴方が犯人?」

「違うよっ!ぼ、僕が巻き戻すから待ってよ!」

「あたしがやる」

「だ、だめだよ!」


巻き戻しボタンを押して巻き戻すが、紅奈が取り上げてしまう。

焦るのはマーモンだけではない。スクアーロもだ。


今朝を撮ったのを見られたくない。

今朝だけではない。
紅奈が本音をぶちまけたのシーンもマーモンはしっかり盗撮していた。

それを見られたら…。


マーモンとスクアーロは顔を見合わせた。

強行手段を使ってでもあのシーンだけは見せられない。


恐る恐る紅奈の後ろからビデオカメラの画面を覗いた。


そこに映るのは、晩餐シーン。
どうやら幸いにも巻き戻しは間に合ったようだ。


ベルがナイフを投げ付けて笑っている紅奈をスクアーロが抱えて逃げ回っている。


「あたしまじで酔ったんだ」


ベルがナイフを投げてることは気にしていない紅奈はまた巻き戻しボタンを押した。


「なんで犯人探してんの?」

「事件かと思ってね。スク、調べた?」

「異変はなかったぞぉ、何も盗まれてねぇようだ」

「なに?大事かい?」

「大事だと楽しみなんだけどね。スク、XANXUSの部屋には誰も来てないんでしょ?」

「…ああ、誰も来てねぇぞぉ」


マーモンが来ていたことに気付いていなかったとは言えない。幸い紅奈はスクアーロの顔を見ていなかったため、バレずに済んだ。


「おっと」


紅奈は楽しげに笑った。


「事件だ、ワトソン君」


スクアーロにビデオカメラを渡して、紅奈はベッドから飛び降りる。


一時停止されていたから、再生ボタンを押した。


晩餐が始まるところだ。

料理が並べられている最中。
紅奈の横でオレンジジュースがコップが注がれている。
酒の入れられていない一杯目だ。

何故かそのオレンジジュースの入ったポットは、料理を乗せたカートに戻された。

別のポットがテーブルに置かれる。


酒の入ったポットだ。


何事もなかったかのように、男の使用人はカートを押して画面から消えた。









20120509

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